住宅ローン金利が上昇している。
これからも金利が上がる可能性があるなら、今のうちに住宅を購入したほうがいいのではないか。
一方で、住宅価格そのものも高くなっています。
今買えば高値づかみになるかもしれない。金利が上がれば、住宅価格が下がる可能性もある。それなら、もう少し待ったほうがいいのではないか。
金利上昇局面では、持ち家を購入するタイミングについて、このような悩みが出てきます。
しかし、投資家の視点から考えると、住宅購入のタイミングを金利だけで判断するのは適切ではありません。
住宅ローン金利、住宅価格、家賃、所得、株式などの金融資産、そしてインフレ。
これらをまとめて考える必要があります。
今回は、金利上昇とインフレが同時に進む環境で、持ち家は急いで買うべきなのか、それとも購入を待つべきなのかを考えてみます。
- 金利が上がるなら、今のうちに買うべきなのか
- 金利上昇は住宅価格にとって逆風にもなる
- 住宅価格が下がるまで待てばいいのか
- 住宅価格だけを見ていると判断を間違える
- インフレになると資産価格も上昇する可能性がある
- 重要なのは住宅価格ではなく、自分の購買力
- 家賃も住宅購入の判断材料になる
- インフレは住宅ローンの負担を軽くすることもある
- 変動金利なら話は変わってくる
- 今買ったほうがいい人
- 住宅購入後に金融資産がゼロになるのは避けたい
- 逆に、購入を急がないほうがいい人
- 住宅購入で重要なのは「いつ」より「いくら」
- インフレなら、購入時期はあまり関係ないのか
- 持ち家は投資商品ではなく、生活のための資産
- 投資家なら住宅と金融資産をセットで考えたい
- まとめ:結局、今は持ち家の買い時なのか
金利が上がるなら、今のうちに買うべきなのか
まず考えられるのが、金利上昇がピークになる前に住宅を購入してしまうという選択です。
住宅ローンを利用する場合、金利が低いほど同じ返済額で多くのお金を借りることができます。
例えば毎月10万円までなら住宅ローンを返済できる家庭があったとします。
金利が低ければ、3,000万円以上を借りられるかもしれません。
しかし金利が上昇すると、同じ毎月10万円の返済額でも借入可能額は減少します。
つまり、金利上昇→借入可能額の減少→住宅購入予算の減少という流れになります。
そのため、金利上昇が続くと考えるなら、低い金利で住宅ローンを組んでおくことには一定のメリットがあります。
特に固定金利なら、契約時の金利を長期間固定できます。
2026年9月時点では、フラット35の21~35年の最頻金利は3.46%となっています。超低金利時代と比較すると、住宅ローンを取り巻く環境は大きく変わっています。
ただし、ここで注意したいのが、金利上昇には住宅価格を抑える側面もあることです。
金利上昇は住宅価格にとって逆風にもなる
住宅を購入する人の多くは住宅ローンを利用します。
そのため金利が上昇すると、購入者が借りられる金額は減少します。
例えば、これまでは4,000万円の住宅を購入できた人が、金利上昇によって3,500万円までしか借りられなくなれば、購入できる物件の価格も下がります。
住宅を購入したい人が減ったり、購入予算が縮小したりすれば、住宅価格には下落圧力がかかります。
つまり、金利上昇は住宅ローンの負担を増やす一方で、住宅価格の上昇を抑える要因にもなるということです。
ただし、実際の住宅価格は金利だけで決まりません。
土地価格、建築費、人件費、住宅の供給量、人口動態、地域の人気など、さまざまな要因があります。
国土交通省も、建築費の高騰や人手不足による人件費上昇、住宅ローン金利の動向などを住宅市場の先行きを左右する要因として挙げています。
したがって、金利が上がれば住宅価格が必ず下がるとは言えません。
住宅価格が下がるまで待てばいいのか
金利上昇によって住宅価格が下がる可能性があるなら、金利がさらに上がるまで待ったほうがいいのでしょうか。
これも一つの考え方です。
しかし、問題は住宅価格が本当に下がるとは限らないことです。
金利が上昇しても、
- 土地価格が上昇する
- 建築資材が高くなる
- 人件費が上昇する
- 住宅の供給が減る
- 人気エリアの需要が強い
といった要因が重なれば、住宅価格は下がらない可能性があります。
金利が上昇する一方で、住宅の供給コストも上昇しているからです。
そのため、金利上昇だけを理由に住宅価格の下落を待つのも、必ずしも正解ではありません。
住宅価格だけを見ていると判断を間違える
住宅を購入するかどうかを考えるとき、多くの人は住宅価格そのものを見ます。
5,000万円の家が高いのか安いのか。
10年後に4,500万円になるのか、6,000万円になるのか。
もちろん住宅価格は重要です。
しかし、インフレが進む環境では、それだけを見ても十分ではありません。
なぜなら、住宅だけでなく、世の中のさまざまな価格が変化するからです。
例えば、
- 食料品
- 光熱費
- 建築費
- 人件費
- 家賃
- 給料
- 株式
- 不動産
などです。
インフレとは、単純に住宅価格だけが上昇する現象ではありません。
お金の価値そのものが変化していく現象です。
インフレになると資産価格も上昇する可能性がある
例えば現在5,000万円の住宅が、10年後に5,500万円になったとします。
住宅価格だけを見ると、500万円も値上がりしています。
しかし、その10年間で物価が上昇たり、転職したりして、給料や株価なども上昇していたらどうでしょうか。
住宅価格が上昇した一方で、自分の所得や保有している金融資産の価値も上昇しているかもしれません。
すると、単純に住宅が高くなったから購入が難しくなったとは言えません。
例えば、
現在
住宅価格:5,000万円
年収:800万円
だったとします。
10年後に、
住宅価格:5,500万円
年収:1,000万円
になったとすれば、住宅価格は上昇していますが、年収に対する住宅価格の比率はむしろ低下しています。
現在は住宅価格が年収の6.25倍ですが、10年後は5.5倍です。
住宅価格だけを見れば値上がりしています。
しかし、自分の購買力に対して考えると、住宅は以前より購入しやすくなっています。
重要なのは住宅価格ではなく、自分の購買力
この考え方は、投資にも似ています。
株価が1,000円から1,500円になったからといって、必ずしも割高になったとは限りません。
企業の利益がそれ以上に増えていれば、株価収益率はむしろ低下しているかもしれません。
住宅についても同じです。
住宅価格が上昇していても、所得や金融資産などの購買力がそれ以上に増えていれば、住宅が相対的に高くなったとは限りません。
逆に住宅価格が下落していても、所得が減少していたり、金利が大幅に上昇していたりすれば、購入しやすくなったとは限りません。
だからこそ、住宅価格だけではなく、自分の購買力とのバランスを見る必要があります。
家賃も住宅購入の判断材料になる
もう一つ重要なのが家賃です。
住宅を購入しなければ、その期間は賃貸住宅に住み続けることになります。
例えば月12万円の家賃なら、年間では144万円。
10年間なら1,440万円です。
もちろん、持ち家にもコストがあります。
住宅ローンの利息だけではありません。
- 固定資産税
- 修繕費
- 火災保険
- 管理費
- 駐車場代
- 購入時の諸費用
- 売却時の費用
などが発生します。
そのため、家賃と住宅ローンだけを比較して、持ち家のほうが得だと判断するのは危険です。
一方で、賃貸にも家賃という大きなコストがあることは忘れてはいけません。
住宅購入を待つ場合には、待っている期間に支払う家賃も含めて考える必要があります。
インフレは住宅ローンの負担を軽くすることもある
インフレと住宅ローンの関係について、もう一つ重要なポイントがあります。
それが固定金利の借金です。
例えば3,500万円を35年間の固定金利で借りたとします。
その後、物価や所得が上昇していったとしても、固定金利なら契約時の金利条件は基本的に変わりません。
物価や所得が上昇する一方で、返済するローンの条件が変わらなければ、将来のお金で返済する借金の実質的な負担は軽くなる可能性があります。
これがインフレ時代における長期固定ローンの一つのメリットです。
ただし、ここにも注意点があります。
物価だけ上昇して、所得が増えなければ家計は苦しくなります。
したがって、インフレだから住宅ローンを借りれば有利という単純な話ではありません。
変動金利なら話は変わってくる
金利が上昇すれば、住宅ローンの返済負担が増える可能性があります。
インフレによって住宅価格や資産価格が上昇しても、住宅ローンの金利まで上昇すれば、家計への負担は大きくなります。
つまり、インフレ=住宅ローンに有利ではありません。
所得も上昇しているのか。
住宅ローンは固定金利なのか変動金利なのか。
金利上昇に家計が耐えられるのか。
このあたりを分けて考える必要があります。
今買ったほうがいい人
では、金利上昇局面で住宅を購入するなら、どのような人が向いているのでしょうか。
まず考えられるのは、長期間その家に住む予定がある人です。
住宅は株式のように簡単に売買できません。
購入時にも諸費用がかかり、売却時にも仲介手数料などのコストが発生します。
そのため、数年程度で売却する可能性が高いなら、住宅価格が上昇するかどうか以前に、売買コストが大きな問題になります。
反対に、20年、30年と長く住む予定なら、短期的な住宅価格や金利の変動に振り回されにくくなります。
また、金利が上昇しても無理なく返済できることも重要です。
今の金利なら返済できる、ではなく、ある程度金利が上昇しても家計が耐えられるかを確認しておきたいところです。
さらに、住宅購入後にも十分な金融資産を残せることが理想です。
住宅購入後に金融資産がゼロになるのは避けたい
例えば、
住宅4,000万円
金融資産2,000万円
という家庭と、
住宅6,000万円
金融資産0円
という家庭を考えてみます。
どちらも総資産は6,000万円です。
しかし、資産の中身は大きく違います。
住宅は重要な資産ですが、必要になったからといってすぐに現金化できるわけではありません。
一方、預金や株式などの金融資産は、比較的換金しやすいという特徴があります。
そのため、住宅購入によって金融資産をほぼ使い切ってしまうと、資産はあるのに現金がないという状態になりかねません。
住宅を購入する場合でも、住宅と金融資産のバランスは意識したいところです。
逆に、購入を急がないほうがいい人
一方で、次のような人は無理に住宅を購入する必要はないでしょう。
住宅価格が高すぎると感じている。
住宅ローンの返済額が家計のギリギリになる。
頭金を入れると預貯金がほとんどなくなる。
転勤や転職などで住む場所が変わる可能性がある。
まだ住みたい地域が決まっていない。
賃貸でも十分満足している。
こうした場合には、金利上昇を理由に購入を急ぐ必要はありません。
住宅は人生最大級の買い物の一つです。
焦って購入するより、家計に余裕を残しておくほうが重要です。
住宅購入で重要なのは「いつ」より「いくら」
住宅購入のタイミングを考えるとき、どうしても、
今買うべきか。
来年まで待つべきか。
金利が上がる前に買うべきか。
住宅価格が下がるまで待つべきか。
という時間軸に目が向きます。
しかし、個人的にはそれ以上に、いくらまでなら無理なく購入できるのかを考えることが重要だと思います。
住宅価格も金利も、将来どうなるかは正確には分かりません。
だからこそ、将来の相場を予想するより、自分の家計がどこまでの変化に耐えられるのかを考えるほうが現実的です。
住宅価格が10%下落することを期待して待っていたら、建築費が上昇して結局価格が下がらなかった。
逆に、金利上昇を恐れて急いで購入したら、その後に住宅価格が下落した。
どちらも十分にあり得ます。
インフレなら、購入時期はあまり関係ないのか
インフレによって住宅価格も株価も所得も上昇するのであれば、いつ購入してもあまり変わらないのでしょうか。
これは、半分は正しく、半分は間違っていると思います。
確かにインフレによってさまざまな名目価格が上昇するのであれば、住宅価格だけを見て高い、安いと判断することには限界があります。
現在5,000万円の住宅が、将来6,000万円になったとしても、その間に所得や金融資産の価値も上昇しているかもしれません。
しかし、住宅価格、所得、金利、家賃、株式などが同じ割合で上昇するわけではありません。
そのため、購入時期による差がなくなるわけではありません。
住宅価格が上昇する以上に所得が増えるのか。
住宅ローン金利はどこまで上昇するのか。
待っている間の家賃はいくらになるのか。
その間に金融資産はいくら増える可能性があるのか。
こうした要素によって、住宅購入の経済的な結果は変わってきます。
持ち家は投資商品ではなく、生活のための資産
そして、住宅について考えるときに忘れてはいけないのが、持ち家には投資以外の価値があることです。
駅から近い。
子どもの学校に通いやすい。
広いリビングがある。
庭がある。
好きな地域に住める。
家族が安心して暮らせる。
こうした価値は、株式の期待リターンのように数字だけでは評価できません。
そのため、住宅を購入するかどうかを住宅価格の上昇・下落だけで判断する必要もありません。
持ち家には、資産としての側面と、生活そのものとしての側面があります。
ここを分けて考えることも大切です。
投資家なら住宅と金融資産をセットで考えたい
住宅を購入する場合でも、住宅だけで資産形成をしようとする必要はありません。
むしろ、住宅を持ちながら株式などの金融資産にも投資することで、資産の性質を分散できます。
住宅は実物資産です。
株式は企業の利益成長を取り込む金融資産です。
現金は流動性の高い資産です。
それぞれに異なる特徴があります。
住宅購入によって資産の大部分を不動産に集中させるより、住宅ローンを適切に利用しながら、一定の金融資産を残しておくという考え方もあります。
もちろん、借りられる金額と借りるべき金額は違います。
銀行が貸してくれる金額いっぱいまで住宅ローンを組む必要はありません。
まとめ:結局、今は持ち家の買い時なのか
金利が上昇し過ぎる前に、今すぐ買うべき。
住宅価格が高いから、購入するのはもう遅い。
私は、どちらも極端な考え方だと思います。
現在の住宅市場では、金利上昇による住宅需要への影響がある一方で、建築費や人件費などの上昇が住宅価格を押し上げる要因にもなっています。
そのため、金利だけを見て購入タイミングを判断することはできません。
重要なのは、
住宅価格
+ 住宅ローン金利
+ 所得
+ 家賃
+ インフレ
+ 金融資産
+ その家に住む期間
をまとめて考えることです。
そして最も大切なのは、住宅価格が今後上がるか下がるかを当てることではありません。
自分の家計なら、どの価格、どの金利までなら無理なく住宅を持ち続けられるのかを基準にすることです。
住宅は、株式のように買い時を一点で当てる商品ではありません。
長期間住む予定があり、無理のない住宅ローンを組めて、購入後にも十分な金融資産を残せるという条件がそろっているなら、金利が上昇しているからといって購入を諦める必要はありません。
逆に、金利上昇前に買わなければ損をするという焦りから、家計に余裕のない住宅ローンを組む必要もありません。
インフレ時代の住宅購入で重要なのは、住宅価格の未来を完璧に予想することではなく、自分の購買力と家計の余力を基準に判断することではないでしょうか。
そして投資家として考えるなら、持ち家を買った後も金融資産を保有し続けられるかどうかも重要です。
住宅を買うことと、資産運用をやめることは別の話です。
住宅という実物資産と、株式などの金融資産をどう組み合わせるか。
金利上昇とインフレが同時に進む時代だからこそ、住宅そのものの価格だけではなく、家計全体の資産と負債を見る視点が必要になりそうです。
