財務省が2026年9月2日、9月募集分の「個人向け国債」の発行条件を発表しました。
今回、注目したいのは、変動10年・固定5年・固定3年の3タイプすべてで金利が上昇したことです。
特に固定5年は年2.24%まで上昇しています。
「国債で2%超」という水準を見ると、以前の低金利時代を知っている人ほど驚くのではないでしょうか。
一方で、
「金利が上がったから、とりあえず個人向け国債を買えばいい」
と考えるのも少し早いかもしれません。
今回は、9月募集分の金利を確認しながら、今の個人向け国債を投資家はどう考えるべきなのかを見ていきます。
9月募集分は3タイプすべて金利上昇
まず、今回発表された9月募集分の金利を確認しましょう。
| 商品 | 8月募集分 | 9月募集分 | 前月比 |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | 1.87% | 1.95% | +0.08ポイント |
| 固定5年 | 2.06% | 2.24% | +0.18ポイント |
| 固定3年 | 1.71% | 1.96% | +0.25ポイント |
※いずれも税引前・年率。
3タイプすべてで金利が上昇しました。
なかでも目を引くのが固定3年です。
前月の1.71%から、1.96%へ+0.25ポイントと、大きく上昇しています。
一方、最も金利が高いのは固定5年の2.24%です。
固定5年はついに2.24%
今回の個人向け国債で特に注目したいのが、固定5年です。
9月募集分では、年2.24%となりました。
財務省によると、今回の固定5年の基準金利は2.29%。
そこから0.05%を差し引いた2.24%が適用金利となっています。
税引後の金利は年1.7849440%です。
仮に100万円を投資した場合、単純計算で年間の税引前利子は、
100万円 × 2.24%=2万2400円
となります。
税引後では約1万7850円です。
もちろん株式投資のような大きな値上がりは期待できません。
しかし、価格変動を抑えながら年2%台の金利を確保できるという点は、以前と比べるとかなり魅力的になってきました。
変動10年は1.95%に上昇
変動10年も、8月の1.87%から1.95%へ上昇しました。
こちらは固定5年とは性格が違います。
変動10年は、半年ごとに適用利率が見直されます。
今回の基準金利は2.96%です。
その0.66倍となる1.9536%をベースに、実際の適用利率が1.95%となっています。
つまり、今後さらに市場金利が上昇すれば、受け取る利息も増える可能性があります。
逆に金利が低下すれば、利率も低下します。
そのため、「今の金利を固定してしまいたい」なら固定5年。
「今後さらに金利が上がる可能性にも対応したい」なら変動10年。
という考え方ができます。
固定5年と変動10年はどちらが有利なのか?
現在の金利だけを見ると、
- 固定5年:2.24%
- 変動10年:1.95%
なので、固定5年のほうが高くなっています。
そのため、
「だったら固定5年を買えばいいのでは?」
と考えたくなります。
しかし、単純に現在の金利だけで判断するのは危険です。
変動10年は、今後の金利上昇に合わせて適用利率が上昇する可能性があります。
たとえば、日本の金利が今後さらに上昇して、変動10年の適用利率が2%台後半、3%台へ上昇するような局面になれば、現在の1.95%で固定されるわけではありません。
つまり、
固定5年=今の高い金利を確定する
変動10年=今後の金利上昇についていく
という違いがあります。
「金利が上がった=今すぐ買うべき」ではない
個人向け国債の金利が上昇しているのは魅力的です。
しかし、
「2.24%だから絶対に買い」
という話ではありません。
なぜなら、今後さらに金利が上昇する可能性があるからです。
例えば固定5年を2.24%で購入した直後に、さらに市場金利が上昇して、次回以降の個人向け国債の金利が2.5%、3%と上がっていけば、「もう少し待てばよかった」と思う可能性があります。
逆に、金利があまり上がらなかったり低下したりすれば、「2.24%で固定しておいてよかった」となります。
つまり、個人向け国債についても、「今の金利が高いか」だけではなく、「これから金利がどう動くか」を考える必要があります。
「一括購入」より「分散購入」という考え方もある
個人的には、金利上昇局面ではここが重要だと思います。
例えば300万円の余裕資金があるとして、「今、300万円を全部個人向け国債に投入する」という方法だけが選択肢ではありません。
例えば、
- 今回100万円
- 数か月後に100万円
- さらに金利動向を見て100万円
というように、購入時期を分散する方法があります。
これなら、「今後さらに金利が上がったら、そのときの金利でも購入する」という余地を残せます。
株式投資でいう「時間分散」に近い考え方です。
個人向け国債は「株式の代わり」ではない
固定5年が2.24%になったからといって、
「S&P500やオルカンより個人向け国債のほうがいい」
という話ではありません。
そもそも役割が違います。
株式には企業の利益成長を通じた大きなリターンが期待できます。
一方、個人向け国債は、「大きく増やすため」ではなく、「大きく減らさないため」の資産です。
例えば、
- 生活防衛資金
- 数年以内に使う予定のお金
- FIRE後の生活資金
- 株価暴落時に売りたくない資金
- 株式とのバランスを取るための資金
などに向いています。
特にFIRE後の資産運用では、株式だけで資産を持つのではなく、一定割合を値動きの小さい資産に移しておく意味は大きくなります。
個人向け国債の大きなメリットは「元本割れしにくい」こと
個人向け国債は、株式や一般的な債券ファンドとは違う特徴があります。
発行後1年を経過すれば中途換金が可能で、中途換金時には一定の調整額が差し引かれる仕組みです。
財務省によれば、個人向け国債は額面100円につき100円で発行・償還され、中途換金の場合も元本割れを避ける仕組みになっています。
そのため、
「株価が半分になるのは怖い。でも銀行預金だけではもったいない」
という資金の置き場所として検討しやすい商品です。
9月募集分の募集期間は9月3日~30日
今回の9月募集分は、
募集期間:2026年9月3日~9月30日
発行日:2026年10月15日
となっています。
3タイプの条件をまとめると、
| 変動10年 | 固定5年 | 固定3年 | |
|---|---|---|---|
| 9月金利 | 1.95% | 2.24% | 1.96% |
| 金利 | 変動 | 固定 | 固定 |
| 満期 | 10年 | 5年 | 3年 |
| 税引後金利 | 約1.55% | 約1.78% | 約1.56% |
| 中途換金 | 発行1年後から | 発行1年後から | 発行1年後から |
投資家が注目したいのは「国債の金利」そのものではない
重要なのは、「日本の金利上昇が、個人向けの安全資産の利回りにも波及している」ということです。
以前は、「銀行に預けてもほとんど利息がつかない」という環境でした。
そのため、少しでもリターンを求めて株式や投資信託に資金を移すことが合理的でした。
ところが金利が上昇してくると、「どこまでリスクを取って株式に投資するのか?」という問題が出てきます。
例えば、期待リターンが年5~7%程度の株式と、元本の値動きを抑えながら年2%台の金利を得られる国債。
この差が以前より小さくなれば、安全資産を保有することの機会損失も小さくなります。
これは資産運用を考えるうえで、かなり大きな変化です。
まとめ
2026年9月募集分の個人向け国債は、3タイプすべてで金利が上昇しました。
「一番金利が高い商品を買う」
だけではなく、
「自分がいつ使うお金なのか」
「今後の金利上昇をどう考えるのか」
「株式との資産配分をどうするのか」
まで考えて選ぶことが重要です。
個人向け国債は、株式のように資産を大きく増やす商品ではありません。
しかし、「減らさないためのお金」に年2%前後の金利がつくという環境になってきたことは、投資家にとって無視できない変化です。
株式市場だけを見るのではなく、「安全資産にいくらの利回りがつくのか」にも目を向ける視点がますます重要になってくるのではないでしょうか。
※金利は税引前。税引後金利は財務省発表値。個人向け国債の購入判断は、金利動向や資金の使用時期、資産配分などを踏まえて検討する必要があります。

