2026年9月に入り、為替市場で急速に円高が進んでいます。
9月8日にはドル円が一時1ドル=152円台後半まで上昇し、約7カ月ぶりの円高水準となりました。背景の一つとなっているのが、日銀による追加利上げ観測です。
市場では、9月17~18日に予定されている日銀の金融政策決定会合で、利上げが行われるとの見方が強まっています。ロイターによると、0.5%への利上げを予想する声も出ていますが、現時点では0.25%程度の利上げを想定する見方もあります。
ここで気になるのが、オルカンへの影響です。
「円高になるとオルカンは下がる」と聞いたことがある人も多いでしょう。
実際、その通りです。
ただし、
円高=オルカンが必ず下落する
という単純な話ではありません。
今回は、現在の円高がオルカンにどのような影響を与えるのか、そしてオルカン投資家はどう考えればいいのかを整理します。
そもそも、なぜ円高になるとオルカンは下がりやすいのか?
まず、オルカンの仕組みから考えてみましょう。
ここでは代表的な商品である「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を想定します。
オルカンは、日本を含む世界中の株式に投資しています。
そして、外国株式については基本的に外貨建ての資産を保有しており、為替ヘッジを行っていません。
そのため、基準価額は大きく分けると、
①世界の株価の動きと②為替の動きの両方から影響を受けます。
運用会社も、オルカンの基準価額について「組入資産の価格変動」と「為替変動」が主な変動要因であり、円高は基準価額の下落要因、円安は上昇要因になると説明しています。
つまり、
世界株が上がっても、円高によってオルカンがあまり上がらない
ということも起こります。
反対に、
世界株が下落しているのに、円安によってオルカンの下落が小さくなる
ということもあります。
「株価×為替」で考えると分かりやすい
例えば、海外の株式に100ドル投資しているとします。
ドル円が、1ドル=160円なら、円換算では100ドル×160円=16,000円です。
ところが、その後、海外株の価格がまったく変わらないまま、1ドル=152円まで円高になったとします。
すると、100ドル×152円=15,200円です。
海外株の価格は一切変わっていないのに、円換算では、
16,000円 → 15,200円
となり、約5%減少しています。
これが、海外資産に投資するオルカンが円高の影響を受ける理由です。
「160円→152円」は結構大きい
仮に、1ドル=160円 → 152円でドルの円に対する価値が、約5%下落したとします。
もちろん、オルカンがそのまま5%下落するわけではありません。
オルカンには、
- 米国株
- 欧州株
- 日本株
- 新興国株
- その他の地域の株式
などが含まれており、ドル円以外の為替も影響します。
また、株価そのものも毎日動いています。
そのため、
「ドル円が5%円高になったから、オルカンも5%下がる」
という計算はできません。
しかし、株価が変わらなければ、円高によって円換算の価値が下がる方向に働くことは間違いありません。
現在の円高は「日銀の利上げ観測」が一つの材料
では、なぜここまで円高が進んでいるのでしょうか。
大きな材料の一つが、日銀の追加利上げ観測です。
9月8日にはドル円が一時152円台まで円高に振れました。
背景には、
- 日銀による追加利上げ観測
- 日米金利差が縮小するとの期待
- 円売りポジションの巻き戻し
- キャリートレードの巻き戻し
などがあります。
特に現在は、単に「9月に利上げするかどうか」だけでなく、
その後も日銀が利上げを続けるのか?
という点まで市場が意識しています。
そのため、日銀が実際に利上げを決定する前から、為替市場では円高が進んでいます。
これは投資家にとって重要なポイントです。
為替は「利上げした瞬間」に初めて動くわけではありません。
市場が利上げを予想すれば、その期待が先に為替に織り込まれるからです。
日銀が利上げしたらオルカンはさらに下がるのか?
必ずしもそうなるとは限りません。
なぜなら、すでに利上げが市場に織り込まれている可能性があるからです。
例えば市場参加者の大半が、
「9月に日銀は0.25%利上げするだろう」
と考えていたとします。
その場合、実際に0.25%利上げしたとしても、「やっぱり利上げしたか」で終わる可能性があります。
むしろ、
「利上げしたけど、今後の利上げは慎重になりそうだ」
と受け止められれば、円安に戻ることすらあります。
逆に、
「今回の利上げだけでなく、今後も積極的に利上げする」
というメッセージが出れば、さらに円高が進む可能性があります。
つまり、日銀の利上げそのものより、市場予想との差が重要です。
オルカンは「円高なら必ず下落」ではない
例えば、世界株式が+10%になったとします。
一方で、円が10%程度上昇したとしましょう。
この場合、円高によるマイナス要因が株価上昇をかなり打ち消します。
単純化すると、1.10 × 0.90=0.99なので、円換算では約1%のマイナスです。
つまり、世界株が上昇しているのに、円高によってオルカンが下落することもあり得ます。
逆に、世界株+20%で、円高-5%程度なら、1.20 × 0.95 = 1.14なので、円換算では約+14%です。
このように、オルカンを見るときは、「株価」と「為替」を分けて考えることが重要です。
これまでの円安はオルカンに追い風だった
これまで日本の投資家がオルカンを保有するうえでは、円安が追い風になっていた局面がありました。
海外株が上昇する。さらに円安になる。
すると、海外株の上昇+円安による円換算額の上昇という2つの効果が重なります。
だから、オルカンの基準価額を見て、「世界株がこんなに上がっている!」と思っていても、その中には為替による押し上げ効果も含まれています。
逆に言えば、今後円高が進めば、これまで受けていた為替の追い風が逆風に変わる可能性があります。
円高になったらオルカンを売るべきなのか?
私は、為替だけを理由に売る必要はないと考えます。
なぜなら、オルカンはそもそも短期的な為替変動を当てるための商品ではないからです。
世界中の企業に長期的に投資する商品です。
そのため、
「円安になったから買う」
「円高になったから売る」
と為替を見ながら売買していると、長期投資という本来の目的から離れてしまいます。
むしろ重要なのは、自分がどのくらいの為替リスクを取っているのかを理解しておくことではないでしょうか。
むしろ積立投資では「円高=悪」とも限らない
すでに大量のオルカンを保有している人にとっては、円高は基本的にマイナス要因です。
しかし、これからオルカンを買う人、毎月積み立てている人にとっては話が違います。
例えば、1万円をドルに交換するとします。
1ドル=160円なら、10,000円 ÷ 160円=62.5ドルです。
ところが1ドル=150円なら、10,000円 ÷ 150円=66.7ドルになります。
同じ1万円でも、円高になればより多くの外貨を買うことができます。
つまり、すでに保有している海外資産には円高が逆風である一方、これから購入する海外資産には円高が追い風という側面があります。
毎月コツコツ積み立てる投資家にとっては、重要なポイントです。
「円安のときに買ったから損」という考え方も少し違う
例えば、ドル円が160円のときにオルカンを買ったとします。
その後、ドル円が150円になれば、為替だけを見れば評価額は下がります。
しかし、投資はそこで終わりではありません。
その後、150円→140円→130円と円高が進むかもしれません。
一方で、世界の企業の利益が増えて株価が上昇する可能性もあります。
さらに、その間も積立を続けるなら、円高になった局面ではより多くの海外資産を購入できます。
だからこそ、「今の為替水準が高いか安いか」を一点読みすることより、長期間にわたって世界株に投資し続けることの方が重要になります。
オルカン投資家が「円高」を気にする意味はある
では、為替を無視していいのでしょうか。
そういうわけでもありません。
特に注意したいのは、資産を取り崩す時期が近い人です。
例えば、FIRE後などで近い将来にオルカンを売却して生活費に充てる予定なら、「世界株が上がれば大丈夫」とは限りません。
世界株が上昇していても、同時に大幅な円高が進めば、円換算の資産額が思ったほど増えない可能性があります。
そのため、取り崩し時期が近づいたら、
- 株式
- 現金
- 円建て債券
- 外貨資産
などをどう組み合わせるのかを考える意味が大きくなります。
一方、20年、30年という長期で積み立てる段階なら、短期的なドル円の動きだけで投資判断を変える必要性は低いでしょう。
今回の円高でオルカン投資家が見るべきポイント
今回の円高局面では、単純に「オルカンが下がるかどうか」だけを見るのではなく、次の3つを見ておきたいところです。
① 日銀は本当に利上げするのか
9月17~18日の金融政策決定会合が大きな焦点になります。
② 利上げ後も追加利上げを続けるのか
実は、こちらの方が為替にとって重要かもしれません。
「今回だけの利上げ」なのか、「今後も段階的に利上げする」のか。
市場がどちらと受け止めるかによって、円の方向性が変わる可能性があります。
③ 世界の株価はどうなるのか
そして忘れてはいけないのが、オルカンは為替商品ではなく株式ファンドだということです。
円高だけを見ていてはいけません。
米国を中心とする世界の企業の利益や株価がどう動くのかも重要です。
まとめ
今回、ドル円が152円台まで円高に進んだことで、オルカン投資家にとっては気になる局面になっています。
オルカンは海外資産を多く含み、原則として為替ヘッジを行わないため、円高は基準価額の下落要因です。
そのため、世界株が横ばい+円高なら、オルカンは下落しやすくなります。
一方で、世界株上昇+円高なら、株価上昇が為替のマイナスを吸収する可能性があります。
つまり、オルカンの価格は「世界の株価×為替」で考えることが、円高局面で最も覚えておきたいポイントです。
そして、日銀の追加利上げ観測によって円高が進んでいるからといって、「円高になるからオルカンは売った方がいい」と短絡的に考えるのもおすすめできません。
むしろ積立投資を続ける人にとっては、円高によって海外資産を以前より安く買えるというメリットもあります。
現在のオルカンは、2026年9月7日時点で基準価額38,002円となっています。
これから日銀が利上げを行い、さらに円高が進むのか。
それとも、すでに利上げ観測が織り込まれて円安方向へ戻るのか。
そして世界株は上昇を続けるのか。
短期的には、この3つの組み合わせによってオルカンの値動きは大きく変わってきそうです。
「円高だからオルカンはダメ」ではありません。
大切なのは、オルカンには株価だけでなく為替というもう一つの変動要因があることを理解したうえで、自分の投資期間や資産状況に合った投資を続けることではないでしょうか。

