最近、「給料は上がったはずなのに、生活が楽になった気がしない」
そんな声をよく耳にします。
実際、この感覚は気のせいではありません。
日本ではここ数年、高水準の賃上げが続いています。
2025年春闘の最終賃上げ率は5.25%、2026年春闘の第1次集計でも5.26%となり、連続で5%を超える賃上げが実現しています。
ひと昔前なら、「給料が5%も上がる」
と聞けば、かなり生活が豊かになりそうな印象です。
それなのに、
- スーパーの会計が高くなった
- 外食の値段が上がった
- 光熱費が上がった
と感じる人は少なくありません。
なぜでしょうか。
私たちは「給料の額面」を見ている
例えば年収500万円の人が5%昇給したとします。
年収は525万円になります。
25万円増えた計算です。
数字だけ見ると間違いなくプラスです。
しかし、本当に重要なのは
「いくらもらえるか」ではなく「何が買えるか」
です。
インフレは気づかないうちに財布を軽くする
仮に物価が毎年3%ずつ上昇するとします。
すると100万円の価値は次のように変化します。
| 経過年数 | 100万円の実質価値 |
|---|---|
| 0年 | 100万円 |
| 1年 | 約97万円 |
| 2年 | 約94万円 |
| 5年 | 約86万円 |
| 10年 | 約74万円 |
| 20年 | 約55万円 |
20年後も通帳には100万円と表示されています。
しかし買えるモノやサービスは現在の55万円相当まで減ってしまいます。
数字は変わらないのに価値は減っている。
これがインフレです。
「給料5%アップ」の本当の意味
ここで最初の話に戻ります。
給料が5%上がったとしても、
もし物価も4%上昇していたらどうでしょう。
生活が豊かになる効果は実質1%程度しかありません。
さらに税金や社会保険料の増加も考えると、手取りベースでは思ったほど増えないケースもあります。
つまり、
給料は増えているのに生活はあまり楽にならない
という現象は十分に起こり得るのです。
貨幣錯覚とは何か
経済学では、このように額面の数字だけを見てしまうことを
貨幣錯覚(マネーイリュージョン)
と呼びます。
例えば、
- 給料が5%増えた
- ボーナスが増えた
- 資産が増えた
と聞くと嬉しくなります。
しかし本来見るべきなのは、
購買力が増えたかどうか
です。
私たちはどうしても「数字」に目を奪われます。
だからこそ、
給料が増えているのに豊かさを実感できないという違和感が生まれるのです。
インフレ対策として私たちにできること
では、インフレによってお金の価値が目減りしていく中で、私たちは何ができるのでしょうか。
インフレそのものを止めることはできません。
しかし、影響を和らげるための行動は取ることができます。
まずは家計を把握する
インフレの影響を最も受けるのは支出です。
特に、
- 食費
- 光熱費
- 通信費
- 保険料
などの固定的な支出は、長期的な影響が大きくなります。
まずは家計簿アプリなどを活用し、
「何にどれだけ使っているのか」
を把握することが第一歩です。
スキルアップや昇給を目指す
インフレに対抗する最も強力な武器は、自分自身の収入を増やすことです。
実際、近年は企業の賃上げも進んでいます。
しかし、インフレ率を上回るペースで収入を伸ばせなければ、生活はなかなか楽になりません。
資格取得やスキルアップ、副業など、
将来の収入増加につながる取り組みは立派なインフレ対策と言えます。
現金だけに偏らない
現金は生活防衛資金として重要です。
ただし、長期間にわたって資産の大部分を現金で保有すると、
インフレによる価値の目減りを受けやすくなります。
確かに現金は安心感がありますが、
「価値が変動しない」のではなく、
「額面が変わらないだけ」
という点は意識しておきたいところです。
長期的な資産運用を活用する
企業は物価上昇に合わせて商品の価格を引き上げたり、利益を伸ばしたりすることがあります。
そのため、長期的には株式などのリスク資産がインフレに対応しやすいとされています。
もちろん価格変動はありますが、
現金だけで保有する場合と比べると、
購買力を維持できる可能性が高まります。
特に新NISAなどを活用した長期・積立・分散投資は、一般的なインフレ対策の一つとして考えられています。
「額面」ではなく「実質」で考える
最も大切なのは考え方かもしれません。
- 給料が増えた
- 配当金が増えた
- 資産額が増えた
という数字を見るだけでなく、
「インフレを考慮するとどうか?」
を考える習慣を持つことです。
貨幣錯覚に陥らず、
実質的な価値を見ることができれば、
より冷静にお金と向き合えるようになります。
私自身が意識していること
私自身は生活防衛資金を確保しつつ、
余剰資金は長期的に株式へ投資しています。
理由は、現金だけでは将来の購買力を維持するのが難しいと考えているからです。
もちろん株価は短期的に上下します。
それでも、
インフレによって確実に価値が目減りする可能性がある現金と比べると、
長期では資産を成長させられる可能性に期待しています。
