私は、資産に余裕があり豪華に暮らしているというわけではなく、質素倹約に慎んでおり、物を大事に使うことで資産が少なくてもゆるFIREしました。
なので、”FIREしても”と言うよりむしろ”FIREするから”と言った方が正確かもしれませんが、私は”物がなかなか捨てられないタイプ”です。
元々、会社員時代は、社宅に住んでおり、今回、退職に伴い社宅から引っ越す必要が生じて気づいたことがあります。引っ越し業者に見積依頼を出す際に、何も考えず家にある全ての荷物を運搬依頼するつもりでいたところ、妻に必要最低限に減らすように指摘されました。
「まだ使える物ばかりなのに捨てるなんてもったいない。」
と思い込んでいましたが、よくよく考えるとどちらかといえばもう使っていないものも多くありました。
これは、心理学で言う損失回避バイアス(Loss Aversion Bias)の影響です。人は利益を得る喜びよりも、損失の痛みを強く感じます。その結果、合理的な判断よりも「損したくない」という感情が優先されるようです。
実際に荷物を一つ一つ見直していくと、驚くことに「いつか使うかもしれない」と思って残していた物ばかりでした。数年前におしゃれ用に買ったけれど普段使いにはもったいなくて結局ほとんど使っていない靴、古くなったヨレヨレの衣服、親戚から譲り受けたおもてなし用の食器類、前回引っ越しの時から段ボールに入れたままのモノたち。
どれも「まだ使える」という理由で手元に置いていたものです。
「靴は、使わないまま加水分解して靴底が剥がれてしまったものの、修理したら使えそう。」
「ヨレヨレの衣服も部屋着には使えるかも。」
「食器類は、なかなか出番がなく使い勝手も悪いが、いつか来客があったときに無いと困る。」
「段ボールには、何が入っていたんだっけ?」
しかし冷静に考えると、それらは“使える”だけであって、“使っている”わけではありません。
私は、これらの物を手放すことを、「価値を失うこと」だと無意識に捉えていました。せっかくお金を出して買ったものや使うと言って譲り受けたものなのに、それを手放すのは“損”だと感じていたのです。
しかし実際には、使っていない時点でその価値はほとんど活かされていません。にもかかわらず、「捨てた瞬間に損が確定する」という心理がブレーキになっていました。
今回の引っ越しを通じて気づいたのは、「物を持ち続けることにもコストがある」ということです。保管スペース、管理の手間、引っ越し費用、そして意思決定疲れ、これらを考えると、「手放すこと=損」ではなく、むしろ「手放さないこと=見えないコスト」だと考える方が自然かもしれません。
もし今、あなたが「まだ使えるから」と理由をつけて手放せない物があるなら、それは本当に“必要な物”でしょうか。それとも、“損をしたくない”という感情に引っ張られているだけでしょうか。
私は、この件でFIREを目指す過程でも、FIRE後の生活でも、「損を避ける」だけでなく「最適を選ぶ」という視点を持つことが大切だと感じました。
<投資における損失回避バイアスには要注意!>
行動経済学の研究では、人は損失の痛みを利益の喜びの約2倍以上強く感じることが分かっています。(ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーのプロスペクト理論に基づきます)
つまり私たちは、「得すること」よりも「損しないこと」に強く支配される生き物なのです。そのため投資においても、「損を確定させたくない」という感情に引っ張られ、合理的ではない行動を取りがちです。
例えば、含み損を抱えた株に対して、本来であれば、将来性が低いと判断した時点で売却し、より期待値の高い投資先に資金を移すべきです。
しかし実際には、「ここで売って負けを確定させたくない」「そのうち戻るはずだ」と考え、ズルズルと保有し続けてしまいます。いわゆる”塩漬け株”ですが、これはまさに、「まだ使えるから捨てられない物」と同じ構造です。
一方で、利益が出ている投資はどうなるでしょうか。こちらは逆に、「せっかく利益が出ているうちに早く利益確定したい」と思ってしまい、まだ伸びる可能性があるのに早々に売却してしまうことがあります。
すなわち、損しているものは手放せない、得しているものはすぐ手放してしまうという、冷静に考えると非合理な行動に陥りやすいのです。これは、FIREを目指す上でも非常に厄介なバイアスだと感じています。
資産形成では、「損小利大を目指し、長期的に合理的な判断を積み重ねること」が何より重要です。しかし損失回避バイアスが強く働くと、その判断が感情に歪められてしまいます。
だからこそ投資においても、あらかじめルールを決めておくことが重要です。
例えば、
①売却基準を事前に決める
②感情ではなくルールで判断する
③ポートフォリオ全体で考える
こうした仕組みを作っておかないと、気づかないうちに“損を避けるための非合理な選択”をしてしまいます。損を避けること自体は悪いことではありません。ただしそれが行き過ぎると、「本来得られたはずの利益を逃す」という、別の損失につながります。
このバランスをどう取るかが、資産形成の鍵になるでしょう。
損切の大切さについて、こちらの記事もご参照ください。⇒損切「ロスカット」を理解するまでの私の投資失敗談~Cut Losses, Protect Gains~

