投資の世界では、「お金に色はない」と言われます。
給料で受け取った1万円も、配当金で受け取った1万円も、株を売却して得た1万円も、その価値は同じです。
しかし、私たちは必ずしもそう考えていません。
- 給料は生活費
- ボーナスはご褒美
- 配当金は使ってもいいお金
- NISAは老後資金
このように、お金を頭の中で別々に管理する心理を「メンタルアカウンティング(心の会計)」と呼びます。
一般的には非合理な判断を招く心理バイアスとして紹介されますが、投資においては必ずしも悪いものとは言い切れないようです。
配当金だけは使いやすい
高配当株投資をしていると、配当金が入金された瞬間に「これは使ってもいいお金だな」と感じたことはないでしょうか。
一方で、同じ金額を株式の売却で得ようとすると抵抗を感じる人も少なくありません。
資産全体で考えれば、どちらも自分のお金です。
それでも私たちは、
「配当金は利益だから使っていい」
「元本は減らしたくない」
と考えがちです。
合理的に考えれば同じお金なのに、頭の中では別の財布として扱っているのです。
私もNISAを特別扱いしている
私自身、新NISAで保有している資産を「老後まで触らないお金」と考えています。
本来であれば、NISA口座のお金も特定口座のお金も同じ資産です。
それでも頭の中では完全に別管理になっています。
そのため、
- 暴落しても売りたくならない
- 日々の値動きが気になりにくい
- 長期保有を継続しやすい
という効果を感じています。
合理的というよりは、心理的な効果の方が大きいのかもしれません。
多くの人もNISAを「別の財布」と考えている?
日本証券業協会の「新NISA開始後の利用動向に関する調査報告書」を見ると、興味深い結果があります。
2025年時点で、
- つみたて投資枠利用者の64.5%
- 成長投資枠利用者の56.4%
が「一度も売却していない」と回答しています。
逆に言えば、売却経験のある人も一定数いるため、「NISAだから絶対に売らない」というわけではありません。
それでも、
- つみたて投資枠では約3人に2人
- 成長投資枠でも過半数
が保有を続けていることになります。
NISAは本来ただの口座です。
しかし実際には、
「老後資金」
「将来のためのお金」
「長期投資用の資産」
といった意味を持たせている人が多いのではないでしょうか。
私は、この行動にもメンタルアカウンティングが影響しているように感じます。
非合理だからこそ続けられる
行動経済学では、メンタルアカウンティングは非合理なバイアスとして扱われます。
確かに、
- 配当金だけを特別扱いする
- 含み益だからとリスクを取り過ぎる
- 資産全体ではなく個別に判断する
といった問題を引き起こすことがあります。
一方で、
- NISAは売らない
- 老後資金には手を付けない
- 生活防衛資金は別管理する
といった良い行動を後押しすることもあります。
人間は機械ではありません。
投資の正解を知っていても、感情によって行動できないことがあります。
だからこそ、心理的な仕組みを味方につけることも大切なのだと思います。
バイアスを消すのではなく、利用する
投資の勉強をしていると、「バイアスを克服しよう」という話をよく見かけます。
もちろん、自分の思い込みに気づくことは重要です。
しかし、完全にバイアスをなくすことは難しいでしょう。
それならば、
「この心理は自分にどんな影響を与えているのか」
を理解しながら利用する方が現実的かもしれません。
NISAを老後資金として扱う。
配当金は再投資資金として管理する。
生活防衛資金は別口座に置いておく。
これらも広い意味ではメンタルアカウンティングです。
そして、そのおかげで投資を続けられるのであれば、決して悪いことではないと思います。
まとめ
メンタルアカウンティングとは、お金を頭の中で別々に管理してしまう心理です。
本来、お金に色はありません。
しかし私たちは、
- 給料
- 配当金
- NISA資産
- 老後資金
といった形で、お金に意味や役割を与えています。
一般的には非合理なバイアスとされていますが、その非合理さが長期投資を支えていることもあります。
実際、新NISA利用者の過半数は一度も売却していません。
人は案外、「お金そのもの」ではなく、「そのお金に付けた意味」によって行動しているのかもしれません。
あえてお金に色を付けることで守れる資産や続けられる投資もあります。
メンタルアカウンティングは、克服すべき敵ではなく、上手に付き合うべき投資心理なのだと思います。
