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積立期と取り崩し期で暴落の意味は真逆になる【順序リスク】とは?

資産形成期は暴落が歓迎されることがあります。

「安く買えるチャンス」
「長期投資なら問題ない」

そんな言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。

実際、毎月積立を続けている人にとっては、暴落によって安く買える期間が生まれるため、将来のリターン向上につながる可能性があります。

しかし、資産を使い始める取り崩し期では話が変わります。

老後やFIRE後に起きる暴落は、単なる評価額の下落では済まない場合があります。

今回は、取り崩し期に重要な「順序リスク(Sequence of Returns Risk)」について解説します。


積立期と取り崩し期では暴落の意味が違う

積立期は毎月新しいお金を投資します。

株価が下がれば、同じ金額でより多くの口数を買うことができます。

そのため、長期的には暴落が必ずしも悪い出来事とは限りません。

一方、取り崩し期は逆です。

生活費を捻出するために資産を売却する必要があります。

株価が下がっている時でも売らなければならないため、安値で口数を手放すことになります。

この違いが、老後資産の寿命を大きく左右します。


同じリターンでも結果は変わる

具体例を見てみましょう。

条件は次の通りです。

  • 初期資産:5,000万円
  • 毎年の取り崩し額:200万円(資産の4%)
  • 取り崩しは年末
  • リターンの順番だけが異なる

ケースA

1年目:+15%

2年目:+10%

3年目:-30%

ケースB

1年目:-30%

2年目:+15%

3年目:+10%

どちらも3年間のリターンは同じです。

違うのは暴落が最初に来るか、最後に来るかだけです。


シミュレーション結果

ケースA残高ケースB残高
開始時5,000万円5,000万円
1年目5,550万円3,300万円
2年目5,905万円3,595万円
3年目3,933万円3,755万円

※各年末に200万円を取り崩し

結果を見ると、

  • ケースA:3,933万円
  • ケースB:3,755万円

となりました。

暴落が最初に来たケースBは、最終的に約178万円少ない結果となっています。


なぜ差が生まれるのか

ケースBでは、1年目に大きな下落が発生しています。

資産は5,000万円から3,500万円に減少し、その状態でさらに200万円を取り崩さなければなりません。

つまり、

資産が傷ついた状態で生活費を捻出するために売却している

のです。

一度売却した口数は、その後市場が回復しても戻ってきません。

そのため、同じリターンを経験しても、暴落が先に来た方が資産は少なくなります。


これが「順序リスク」

この現象を

順序リスク(Sequence of Returns Risk)

と呼びます。

重要なのは、「平均リターンが何%だったか」だけではありません。

取り崩し期では、

どの順番でリターンが発生したか

も同じくらい重要になります。

積立期は暴落が早く来ても大きな問題にならないことが多いですが、取り崩し期は逆です。

特に退職直後やFIRE直後に大きな暴落が起きると、資産寿命に大きな影響を与える可能性があります。


順序リスクへの対策

順序リスクを完全になくすことはできません。

しかし、影響を和らげる方法はあります。

現金クッションを持つ

生活費の数年分を現金で確保しておけば、暴落時に無理に株式を売却せずに済みます。

債券を組み合わせる

株式100%よりも、債券を含めたポートフォリオの方が値動きを抑えやすくなります。

柔軟に取り崩す

毎年必ず同じ金額を取り崩すのではなく、相場状況に応じて支出を調整する方法もあります。

取り崩し方法には大きく分けて2種類あります。

定額取り崩し

毎年同じ金額を取り崩す方法です。

例えば、

  • 資産5,000万円
  • 毎年200万円取り崩し

のようなケースです。

生活費の計画を立てやすいというメリットがあります。

一方で、暴落時にも同じ金額を取り崩す必要があるため、資産が大きく減った状態で多くの口数を売却しなければなりません。

順序リスクの影響を受けやすい方法です。


定率取り崩し

毎年、資産の一定割合を取り崩す方法です。

例えば、

  • 毎年資産の4%を取り崩す

というケースです。

資産が5,000万円なら200万円ですが、暴落で4,000万円になれば取り崩し額は160万円になります。

資産が減れば取り崩し額も減るため、資産の枯渇リスクを抑えやすいという特徴があります。

その反面、生活費が毎年変動するため、支出を柔軟に調整する必要があります。


どちらが良いのか

正解は人によって異なります。

項目定額取り崩し定率取り崩し
生活費の安定性
資産寿命
順序リスクへの強さ
家計管理のしやすさ

定額取り崩しは生活が安定しますが、暴落時のダメージを受けやすくなります。

一方、定率取り崩しは資産を長持ちさせやすい反面、相場が悪い年には支出を抑える覚悟が必要です。

実際には、

  • 生活費の最低限部分は定額で確保
  • 旅行や趣味などは相場に応じて調整

という「ハイブリッド型」を採用する人も少なくありません。


まとめ

積立期において暴落は「安く買えるチャンス」になることがあります。

しかし、取り崩し期では話が別です。

同じリターンでも、暴落が先に来るか後に来るかで結果は変わります。

今回の例では、暴落のタイミングが違うだけで3年後の資産額に約178万円の差が生まれました。

老後資産を考える際は、

「どれだけ増やせるか」だけでなく、「どう守りながら使うか」

という視点も重要なのかもしれません。

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