SNSを見ていると、「この銘柄が熱い!」「○○株を買いました!」「この株、まだまだ上がる!」といった投資情報が次々と流れてきます。
誰かが大きく利益を出しているのを見ると、
「自分も同じ株を買えば儲かるのでは?」
と思ってしまうことがあります。
そして、話題になった銘柄に次々と投資家が集まっていきます。
いわゆる「イナゴ投資」です。
イナゴ投資には、ある意味で合理的な面もあります。
自分で企業分析をする必要がありません。
すでに誰かが「この会社は伸びる」と判断してくれているからです。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
その人と自分では、投資環境がまったく違うからです。
同じ銘柄を買っても、同じように儲かるとは限りません。
むしろ、他人の判断に乗っかっているだけだと、その人が間違えた瞬間に、自分も一緒に巻き込まれてしまいます。
イナゴ投資は「考えることを減らせる」
イナゴ投資そのものを完全に否定する必要はありません。
投資には、調べなければならないことがたくさんあります。
- 企業の業績
- PERやPBR
- キャッシュフロー
- 財務状況
- 配当
- 成長性
- 業界の将来性
- 金利
- 為替
- 景気
- 株価水準
これらをすべて自分で分析するのは大変です。
そこで、すでに分析している人の意見を参考にするのは、効率的です。
自分でゼロから銘柄を探すより、「この人が注目している会社を調べてみよう」としたほうが、銘柄探しの時間を大幅に短縮できます。
つまり、
他人の投資判断を「情報源」として利用すること自体は悪くありません。
問題なのは、その先です。
危険なのは「理由まで他人に任せる」こと
例えば、Aさんがある銘柄を買ったとします。
Aさんは、
- 30代
- 独身
- 年収1,000万円
- 金融資産1億円
- 毎月20万円を投資
- 株価が半分になっても10年以上保有できる
という人だったとしましょう。
Aさんは、その銘柄に資産の20%を投資しました。
そしてSNSで、
「この会社は将来大きく成長すると思う。買いました!」
と発信しました。
それを見たBさんが、
「Aさんが買っているなら自分も買おう」
と考えます。
しかしBさんは、
- 40代
- 子どもがいる
- 住宅ローンがある
- 金融資産7,000万円
- FIREして収入が少ない
- 今後の生活費も資産から取り崩す
- 大きな損失を避けたい
という状況だったとします。
AさんとBさん。
同じ銘柄を買っても、同じ投資にはなりません。
投資では「誰が買ったか」が重要
株式投資では、
「何を買うか」だけでなく、「誰が、どんな状況で買うか」も重要です。
例えば、同じ株が30%下落したとします。
保有株が10万円分買っていた場合、30%は3万円です。
一方、100万円分なら30%は30万円、1,000万円分なら30%は300万円です。
金額としては大きく違います。
さらに重要なのは、その人の生活です。
若くて収入が安定している人なら、「まあ、10年待てばいいか」と考えられるかもしれません。
しかし、これから資産を取り崩して生活する人なら、資産が30%も減ってしまったら生活費が心配になります。
同じ30%の下落でも、心理的なダメージはまったく違います。
「儲かった人」を真似しても、「儲かる」とは限らない
さらに厄介なのが、SNSでは成功した人が目立ちやすいことです。
例えば、「○○株で100万円儲かった!まだまだ上がるぞ!」という投稿があったとします。
その人は株価1,000円で買っていたとして、自分が買ったのは1,500円だったとします。
その後、株価が1,200円まで下落したとすると、最初の投資家はまだ20%の利益があります。
一方、自分は20%の含み損です。
同じ銘柄なのに、結果がまったく違います。
「売るタイミング」まで真似できない
さらに重要なのが売却です。
誰かの買いだけを真似しても、その人がいつ売るのかは分かりません。
例えば、
「○○株を買いました!」
という投稿を見て、自分も買ったとします。
ところが、その後に株価が上昇し、含み益が30%になりました。
もっと上がるかもしれないと思って持ち続けていると、突然株価が急落して、利益が消えてしまうことは普通に考えられます。
一方、その投稿者はすでに売却して利益を確定していたかもしれません。
こうなると、「同じ銘柄を買ったのに、なぜ自分だけ損をしたのか?」ということになります。
それは、買った場所も、売った場所も、投資目的も違ったからです。
そもそも「その人が正しい」とは限らない
そして最大の問題があります。
それは、
真似している相手が間違っていたらどうするのか?
ということです。
投資の世界に、絶対に正しい人はいません。
どれだけ有名な投資家でも、どれだけフォロワーが多い人でも、どれだけ過去に利益を出している人でも、未来の株価を確実に予測することはできません。
問題なのは、自分で投資理由を考えていない場合です。
自分:
「○○さんが買っていたから買った」
○○さん:
「業績がこうなると思ったから買った」
この状態では、○○さんの判断が間違った瞬間に、自分には判断材料が残りません。
「なぜ買ったのか」が自分の中に存在しないからです。
他人の投資判断を「答え」にしてはいけない
では、SNSや他人の投資情報を見てはいけないのでしょうか。
私はそうは思いません。
むしろ、積極的に利用していいと思います。
ただし、「答え」としてではなく、「問い」として使うことが重要です。
例えば、
「○○さんがこの株を買った」
という情報を見たら、
「なぜこの人は、この株を買ったんだろう?」
と考えるとよいでしょう。
そして、
- 業績はどうなのか?
- 株価は割高ではないのか?
- 配当利回りは?
- 財務は健全なのか?
- 今後の成長余地は?
- 自分の投資目的に合っているのか?
- 何%下落したら耐えられないのか?
- いつ売るつもりなのか?
を考えます。
こうすれば、他人の投資判断が自分の分析を始めるきっかけになります。
投資で真似するべきなのは「銘柄」ではなく「考え方」
他人のポートフォリオをそのまま真似するのではなく、その人がどういう基準で投資しているのかを参考にします。
例えば、
「PER15倍以下を中心に買う」
「配当を減らさない企業を選ぶ」
「売上高が長期的に伸びている企業を選ぶ」
「株価が下落しても10年間保有する」
といった投資ルールです。
こうした考え方を参考にしながら、自分の年齢、資産、収入、家族構成、投資期間、リスク許容度に合わせて作り変えていくなら、他人から学びながらも、自分の投資になります。
「自分の投資」を作る
結局、投資で重要なのは、「何を買うか」だけではありません。
もっと重要なのは、
「自分は何のために投資しているのか?」
です。
例えば、
老後資金を作りたい人。
10年後の住宅購入資金を作りたい人。
FIREを目指している人。
すでにFIREして資産を取り崩している人。
子どもの教育資金を確保したい人。
同じ「投資家」でも、目的はまったく違います。
当然、取るべきリスクも違います。
20代で資産形成を始めたばかりの人と、40代でまとまった資産を持ち、これから取り崩しを考えている人では、同じ投資戦略が最適とは限りません。
だからこそ、「あの人が儲かったから、自分も同じようにやればいい」ではなく、「あの人はなぜ儲かったのか。そして、その方法は自分にも合っているのか?」と考える必要があります。
まとめ:他人を参考にしても、判断まで委ねない
イナゴ投資は、考えることを減らせるという意味では非常に楽です。
誰かが銘柄を探してくれる。
誰かが分析してくれる。
誰かが買うタイミングを教えてくれる。
しかし、その「誰か」が間違えたとき、自分も一緒に間違えることになります。
さらに、その人と自分では、
- 年齢
- 家族構成
- 収入
- 資産額
- 投資期間
- 投資目的
- リスク許容度
が違います。
だから、同じ銘柄を買ったからといって、同じ結果になるわけではありません。
他人の投資を参考にするのは、投資の勉強として非常に有効です。
ただし、
他人の「答え」を買うのではなく、他人の「考え方」を学ぶ。
そして最後は、
「自分の状況なら、この投資をしても大丈夫なのか?」
と自分自身に問いかけたい。
投資で最終的に自分のお金を守れるのは、他人ではありません。
自分自身です。
他人の成功を追いかけるより、「自分にとって勝ち続けられる投資」を作るこそが、長期投資では大切なのではないでしょうか。
