投資を始めると、多くの人が「どの銘柄を買えばいいのか」「どうすれば利益を増やせるのか」といった情報を探し始めます。
もちろんそれ自体は大切なことですが、その前に考えておきたいことがあります。
それが「自分はどれくらいのリスクを取れるのか」という視点です。
同じ投資でも、ある人にとっては問題ない値動きが、別の人にとっては大きなストレスになることがあります。にもかかわらず、この違いを意識しないまま投資を続けてしまうと、途中で不安に耐えられなくなったり、想定外の行動を取ってしまう原因になります。
実際、「もっと増やしたい」という気持ちからリスクを取りすぎてしまい、結果として大きく損をしてしまうケースは少なくありません。
こうした失敗を防ぐために重要なのが、「リスク許容度」という考え方です。
この記事では、自分に合ったリスクの取り方をどのように考えればいいのか、そして投資判断をブレさせないための基準としてどう活用すればいいのかを整理していきます。
リスク許容度とは
リスク許容度とは、「どれくらいの値動きまで受け入れられるか」という基準のことです。
ここでいうリスクは、単なる「損をする可能性」ではなく、「価格の変動そのもの」を指します。投資ではリターンを狙う以上、価格の上下は避けられません。(※ボラティリティという用語がより正確かもしれませんが、ここでは便宜的にリスクという単語を使います。)
大きく増やしたければ、その分大きく減る可能性も受け入れる必要があります。ローリスク・ハイリターンは基本的にはあり得ません。
そして、この「どこまで受け入れられるか」は人によって異なります。
同じように10%の下落でも、「まだ想定内」と感じる人もいれば、「怖くて持ち続けられない」と感じる人もいます。この違いは、知識の多さだけでなく、資産状況や収入、性格などによっても左右されます。だからこそ重要なのは、「どの程度の変動なら保有し続けられるのか」という視点です。
なぜリスク許容度が重要なのか
リスク許容度が重要になるのは、「想定外の動き」に直面したときです。
投資では、どれだけ事前に考えていても、価格が大きく動く場面は避けられません。そのときに、自分の許容範囲を超えていると、冷静な判断ができなくなります。
たとえば、本来は長期で保有するつもりだったのに、下落に耐えきれず途中で売ってしまう。あるいは、損失を取り戻そうとして、さらにリスクの高い投資に手を出してしまう。
こうした行動は、知識が足りないから起こるというよりも、「自分に合っていないリスクを取っていること」が原因である場合が少なくありません。
逆に、自分のリスク許容度に合った投資であれば、一時的に評価額が下がったとしても、「想定内の動き」として受け止めることができます。
この差が、結果的に大きな失敗を避けられるかどうかを分けることになります。
リスク許容度の決め方
リスク許容度の決め方に明確な正解があるわけではありませんが、いくつかの視点から整理することで、自分なりの基準を持つことができます。
1.生活に必要なお金と投資資金を分ける
まず前提として、日常生活に必要なお金と、投資に回すお金を明確に分けることが重要です。
生活費まで投資に回してしまうと、値動きに対する不安が一気に大きくなり、冷静な判断が難しくなります。「失っても生活に支障が出ない範囲かどうか」は、リスク許容度を考えるうえでの基本になります。
投資に回せる余剰資金の考え方は、こちらの記事が参考になります。⇒投資を始める前に必ずやるべき「お金の仕分け」とは
2.どれくらいの下落なら耐えられるかを考える
次に、「もし資産が〇%あるいは〇円減ったらどう感じるか」を具体的にイメージしてみることです。この感覚は人によって大きく異なります。
たとえば、10%の下落で不安になるのか、20%でも保有を続けられるのかを考えます。資産額が100万円のケースでは、
・下落率10% ⇒ 10万円
・下落率20% ⇒ 20万円
・下落率30% ⇒ 30万円
下落率ではなく、絶対値から考えた場合は、以下の通りです。
たとえば、自分の許容できる限度額が30万円とすると資産額別の許容下落率に換算すると以下の通りです。
・資産額100万円 ⇒ 30%
・資産額200万円 ⇒ 15%
・資産額300万円 ⇒ 10%
これらを以下に網羅的に整理してみました。これで、どのくらいの資産額でどのくらいのリスクを許容できそうかを確認しやすくなったのではないでしょうか。
| 資産額 [万円] | 下落率/損失額 | |||||
| 5% | 10% | 15% | 20% | 30% | 50% | |
| 100万円 | 5万円 | 10万円 | 15万円 | 20万円 | 30万円 | 50万円 |
| 200万円 | 10万円 | 20万円 | 30万円 | 40万円 | 60万円 | 100万円 |
| 300万円 | 15万円 | 30万円 | 45万円 | 60万円 | 90万円 | 150万円 |
| 500万円 | 25万円 | 50万円 | 75万円 | 100万円 | 150万円 | 250万円 |
| 1000万円 | 50万円 | 100万円 | 150万円 | 200万円 | 300万円 | 500万円 |
3.過去の行動から自分の傾向を知る
実は、自分のリスク許容度は「これまでの行動」に現れています。
少し値下がりしただけで売ってしまった経験があるなら、それが現在の許容度の目安です。逆に、下落局面でも保有を続けられた経験があるなら、それは一つの基準になります。
リスク許容度は、最初から完璧に決めるものではありません。資産額の増減・そのとき自分の置かれた環境・投資の経験値などに伴っても変動します。
投資を続けながら少しずつ調整していく「動的な基準」として捉えることが大切です。
リスク許容度の活用
リスク許容度のシミュレーションは、自分がどのくらいの下落まで冷静でいられるかを具体化するためのものです。
たとえば、「10万円の含み損なら気にせず保有できるが、30万円になると不安が強くなる」と感じるのであれば、そのラインが一つの目安になります。
この目安を超える金額で投資をしている場合、リスクを取りすぎている可能性があります。
その場合は、より値動きの安定した銘柄に切り替えることや、投資金額そのものを減らすことも一つの選択肢です。
特に、「安心して眠れない」「仕事中も相場が気になってしまう」といった状態は、リスク過多の典型的なサインと言えます。
投資は継続してこそ意味があるため、日常生活に支障が出ているようであれば、一度立ち止まって自分のリスク水準を見直すことが重要です。
まとめ
リスク許容度は、一度決めたら終わりというものではありません。
収入の変化、家族構成の変化、投資経験の蓄積などによって、人の感じ方は少しずつ変わっていきます。
たとえば、投資を始めたばかりの頃は小さな値動きでも不安に感じていたとしても、経験を重ねることで冷静に受け止められるようになることもあります。逆に、生活環境の変化によって、以前よりもリスクを取りにくくなるケースもあります。
そのため、最初に決めたリスク許容度を絶対的な基準として固定するのではなく、定期的に見直していくことが重要です。

