米連邦準備制度理事会、FRBが約3年2カ月ぶりに利上げしました。
FRBは2026年9月16日のFOMCで、政策金利を0.25%引き上げ、3.75~4.00%とすることを決定しました。利上げは2023年7月以来です。今回の決定はFOMCメンバー12人全員の賛成によるものでした。
米国では、2022年から2023年にかけてインフレを抑えるために急速な利上げが行われ、その後は金融政策の転換が進んできました。
そんな中での今回の利上げは、単なる0.25%の金利変更ではありません。
米国の金融政策が、再び引き締め方向へ向かい始めた可能性を示す出来事です。
では、今回の利上げによって米国株、ドル、債券はどうなるのでしょうか。
そして、米国株を組み入れているオルカンなどに投資する長期投資家は、何を考えておけばいいのでしょうか。
FRBはなぜ3年2カ月ぶりに利上げしたのか
FOMC後の声明では、米国経済について経済活動は堅調なペースで拡大していると評価されています。
個人消費は底堅く、生産性の伸びも強く、設備投資も堅調です。雇用についても大きく悪化しているわけではありません。
一方で、FRBが問題視しているのがインフレです。
FOMCは、インフレが依然として高い水準にあり、今回の利上げによって物価上昇率を2%の目標へより早く戻すことを目指すとしています。
つまり今回の利上げは、景気が比較的底堅い一方で、インフレへの警戒が強まっていることが背景にあると考えられます。
特に8月の米国消費者物価指数では、ガソリン価格の上昇などを背景に物価上昇圧力が強まり、FRBの利上げ観測が高まっていました。
景気が大きく崩れている状況での利上げと、景気が比較的強い中での利上げでは、株式市場への意味合いが異なります。
今回の利上げは一度だけなのか
FOMC参加者の政策金利見通しを見ると、2026年末の政策金利は4.00~4.25%程度が中央値となっています。
つまり、今回の3.75~4.00%から、年内にもう一度0.25%の利上げを行うシナリオが示されています。
実際、18人のFOMC参加者のうち16人が、2026年中に少なくとももう一度の利上げを見込んでいます。
もちろん、これは将来の政策を確定させたものではありません。
FRB自身も、今後の政策は経済指標などを見ながら判断するとしています。
それでも、投資家にとっては大きな意味があります。
これまでのように、金利が下がっていくことを前提に資産価格を考える環境ではなくなってきたからです。
米国株には逆風になるのか
一般論として、金利上昇は株式市場にとって逆風です。
企業が銀行からお金を借りるコストが上昇すれば、設備投資や事業拡大の負担が増えます。
また、株式の価値を考えるときには、将来得られる利益を現在の価値に換算する必要があります。
金利が高くなれば、将来の利益を現在価値に換算する際の割引率も高くなります。
そのため、特に将来の成長期待が株価に大きく織り込まれている企業では、金利上昇によって株価の評価が下がりやすくなります。
いわゆる高PER銘柄が金利上昇に弱いとされる理由の一つです。
一方で、ここからすぐに米国株全体が下落すると考えるのも早計です。
株価は金利だけで決まるものではないからです。
企業利益が予想以上に伸びれば、金利上昇によるマイナス要因を吸収することもあります。
今回のFOMC後には米国株が売られる場面があり、9月16日の取引ではダウ平均が1.21%、S&P500が0.45%下落しました。一方、ナスダックはほぼ横ばいでした。
この動きからも、利上げのニュースだけで市場全体を説明するのは難しいことが分かります。
むしろ重要なのは企業利益
長期投資家が米国株を見るとき、金利だけに注目するのは危険です。
金利が上昇しても、企業がそれ以上に利益を伸ばせば株価が上昇する余地はあります。
逆に、金利が低下しても景気後退によって企業利益が大きく落ち込めば、株価が下落することもあります。
そのため、金利が上がるから株を売るという判断よりも、金利上昇によって企業利益や株価の評価にどのような影響が出るのかを見ることが重要です。
特に現在の米国株は、AIや半導体を中心とした成長期待が株価を支えている面があります。
金利が上昇する局面では、こうした成長期待がどこまで企業利益として実現するのかが、これまで以上に重要になってくるでしょう。
ドルにはどんな影響があるのか
米国の利上げは、基本的にはドルにとってプラス材料です。
米国の金利が上昇すれば、ドル建て資産の利回りが高くなります。
他国との金利差が拡大すれば、相対的にドルを保有する魅力も高まります。
今回もFRBの利上げを受けてドルは上昇し、ドル指数は0.63%上昇しました。
ただし、ここでも注意したいのが、為替は金利だけで決まらないということです。
市場はFRBが実際に利上げする前から、その可能性を織り込んでいます。
そのため、予想されていた利上げが実施されただけなら、為替市場では大きな反応が起きないこともあります。
反対に、予想よりも利上げが続きそうだと判断されれば、追加的なドル高につながる可能性があります。
今後はFRBがどこまで金利を引き上げるのか、そして米国経済がその高金利に耐えられるのかがポイントになります。
債券はどうなるのか
基本的に、金利が上昇すると既に発行されている債券の価格は下落します。
例えば、年3%の利率で発行された債券を持っているとします。
その後、市場金利が4%まで上昇すれば、新しく発行される債券のほうが魅力的になります。
そのため、既存の3%の債券は価格を下げることで、実質的な利回りを市場水準に近づける必要があります。
これが金利上昇局面で債券価格が下落する基本的な仕組みです。
実際、今回のFRB利上げ後には米国債利回りが上昇し、2年債利回りは4.738%、10年債利回りは5%まで上昇しました。
ただし、金利上昇は、これから債券を購入する人にとっては利回り上昇というメリットになります。
これまでの低金利環境では、債券に投資しても十分な利回りを得にくい状況でした。
金利が上昇すれば、新たに購入する債券から得られる利息収入は大きくなります。
つまり、債券は金利上昇によって一度価格が下がる可能性がある一方、長期的にはより高い利回りで運用できる環境が生まれることになります。
オルカンへの影響はどう考える?
日本の個人投資家にとって気になるのが、オルカンへの影響でしょう。
オルカンは全世界株式に分散投資する商品ですが、現在は米国株の比率が大きくなっています。
そのため、米国の金融政策はオルカンの値動きにも影響します。
米金利が上昇すれば、米国株のバリュエーションには下押し圧力がかかる可能性があります。
一方、ドル高が進めば、円を基準にした場合には海外資産の円換算額を押し上げる要因になります。
つまり、米金利上昇がオルカンにとって全面的に悪いわけでも、全面的に良いわけでもありません。
株価と為替という異なる要素を分けて考える必要があります。
そして、もう一つ重要なのが投資期間です。
数日や数カ月の値動きであれば、FRBの発言や金利、為替によって大きく動く可能性があります。
しかし、20年、30年という長期で考えれば、最終的に重要になるのは世界の企業がどれだけ利益を生み出していくかです。
利上げニュースを見て投資方針を変えるべきなのか
今回のニュースを見て、米国株を売るべきなのか。
あるいは、利上げ前に買っておけばよかったと考えるべきなのか。
長期投資では、こうした短期的な判断には慎重になる必要があります。
FRBの金融政策を予想して売買するには、インフレ、雇用、景気、原油価格、金融市場など、非常に多くの要素を見なければなりません。
しかも、それらを市場参加者全員が見ています。
つまり、自分だけが知っている情報をもとに売買できるわけではありません。
今回の利上げも、発表された瞬間に市場が初めて知ったわけではありません。
事前に利上げ観測が高まり、株価や債券利回り、為替にはある程度織り込まれていました。
だからこそ、ニュースを見てから慌てて投資方針を変更するよりも、そもそも金利上昇局面でも保有し続けられる資産配分になっているかを考えることが大切です。
長期投資家が確認したい3つのポイント
今回のFRB利上げをきっかけに、長期投資家が確認しておきたいポイントは3つあります。
インフレは本当に収まるのか
FRBが今回利上げした最大の理由の一つがインフレです。
FOMCの見通しでは、2026年末のPCEインフレ率は3.7%、2027年末には2.3%まで低下する見通しです。コアPCEインフレ率についても2026年の3.4%から2027年には2.5%へ低下する見通しとなっています。
問題は、このシナリオ通りにインフレが低下するかです。
インフレが高止まりすれば、追加利上げが必要になる可能性があります。
逆に物価上昇率が順調に低下すれば、今回の利上げが一時的なものになる可能性もあります。
米国経済は高金利に耐えられるのか
もう一つは米国経済です。
金利を上げれば、時間の経過とともに住宅ローンや企業融資など、さまざまなところに影響が及びます。
それでも企業活動や個人消費が堅調なら、米国経済は高金利環境をある程度吸収できます。
反対に景気が急速に悪化すれば、FRBは金融政策を再び緩和する必要が出てくるかもしれません。
したがって、今後は金利そのものだけでなく、雇用や個人消費、企業業績にも注目する必要があります。
株価は利益成長を織り込んでいるのか
そして、株式投資家にとって最も重要なのが企業利益です。
金利が高くても利益が伸びる企業はあります。
一方、将来の利益成長を前提として高い株価がついている企業は、金利上昇によって評価が変化する可能性があります。
特に米国株では、AI関連をはじめとして高い成長期待が株価に織り込まれている銘柄もあります。
今後は、単純にAIだから、米国株だからという見方ではなく、現在の株価に対して将来の利益がどこまで成長する必要があるのかを見ることが重要になりそうです。
利上げは投資家にとって悪いニュースなのか
今回のFRBによる3年2カ月ぶりの利上げ。
ニュースだけを見ると、株式投資家にとっては悪材料に感じるかもしれません。
しかし、利上げには経済を冷やしてインフレを抑えるという役割があります。
インフレが抑えられ、物価が安定すれば、長期的には経済活動にとってプラスになる面もあります。
また、金利上昇によって債券や現金の運用利回りが高くなれば、投資家にとって選択肢が増えるという側面もあります。
したがって、今回の利上げを単純に株式市場にとって良い、悪いという二択で考える必要はありません。
重要なのは、金利上昇によって資産価格や企業活動の前提条件がどのように変わるのかを理解することです。
まとめ
FRBは2026年9月、2023年7月以来となる約3年2カ月ぶりの利上げを実施しました。
政策金利は3.75~4.00%となり、FOMC参加者の多くは2026年中にさらに1回の利上げを見込んでいます。
今回の利上げによって、
- 米国株には金利上昇によるバリュエーション面の逆風
- ドルには金利上昇による上昇圧力
- 既存の債券には価格下落圧力
- 新しく購入する債券には利回り上昇というメリット
が考えられます。
ただし、これらは単純な一方向の関係ではありません。
株価は金利だけでなく企業利益に左右され、為替は日米の金利差や市場の予想によって動きます。債券も短期的な価格変動と、長期的に得られる利息収入を分けて考える必要があります。
そして、オルカンのような長期投資では、FRBの一度の利上げで投資判断を大きく変えるよりも、金融政策が変化しても投資を続けられる資産配分になっているかを確認することが重要です。
3年2カ月ぶりの利上げは、金利が再び上昇する局面に入ったことを示す大きなニュースです。
だからこそ、次のFOMCで何%になるかを当てにいくよりも、インフレ、景気、企業利益、そして株価の水準を継続的に確認していくが、今回の利上げを長期投資に生かすための基本的な考え方ではないでしょうか。

