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円安を止めたいのに金利は上げたくない? 高市政権の政策矛盾から考える「これからの投資戦略」

最近の為替市場を見ていると、「日本はいったい何をしたいのだろう?」と思ってしまいます。

7月31日、日本と米国が日米協調による円買い為替介入を実施しました。

歴史的な円安水準を是正するため、日本だけでなく米国も参加した異例の対応です。

ところが、その一方で気になるニュースが飛び込んできました。

8月4日、時事通信は、高市首相が5月22日に植田日銀総裁と会談した際、長期金利の上昇を抑えるため、必要に応じて国債を買い入れるよう求めていたと報じました。

ただし、この点について日銀側は「国債買い入れの強化は明確に求められていない」と説明しています。そのため、現時点で政府の正式な政策として断定するのは避けるべきでしょう。

それでも、この一連の動きを並べると、非常に興味深い構図が見えてきます。

円安は止めたい。

でも、長期金利の上昇は抑えたい。

さらに積極的な財政政策も進めたい。

一見すると、少し矛盾していないでしょうか。

この記事では、この「ねじれ」を整理しながら、投資家が今後どこを見ておくべきなのかを考えてみます。


円安を止めるなら、本来は金利を上げたい

まず、為替と金利の関係から考えてみましょう。

一般的に、日本の金利が上昇すれば、円の魅力は高まりやすくなります。

例えば、日銀の利上げにより日本と米国の金利差が縮小すれば円を買う動きが強まるため、円高圧力となります。

もちろん、為替は金利差だけで決まるものではありません。

しかし、円安を抑えるという観点では、日銀の利上げは比較的分かりやすい手段の一つです。

実際、7月31日の日米協調介入後には、日銀の追加利上げ観測が強まる可能性も指摘されています。

ところが、ここで問題になるのが長期金利です。


長期金利は上げたくない?

日本では、国債の大量発行が続いています。

そこに積極財政が加われば、市場では「今後、国債の発行額が増えるのではないか」という懸念が出てきます。

国債の供給が増える一方、投資家が十分に買ってくれなければ、国債価格が下落し、長期金利が上昇するという動きになりやすくなります。

そして長期金利が上昇すれば、政府にとっても問題が大きくなります。

国債の利払い負担が増えるからです。

さらに、住宅ローンの固定金利や企業の借入金利などにも影響し、経済への負担も大きくなります。

そのため政府としては、長期金利が急激に上昇することは避けたいという思惑があります。

実際、7月には長期金利が一時2.9%まで上昇し、片山財務相も市場の信認を混乱させないことの重要性を強調しています。


「円安」と「金利」の矛盾が生まれる

問題はここです。

円安を抑えようとするなら、金利を上げるという選択肢が出てきます。

ところが長期金利を抑えようとすれば、金利を上げたくないという話になります。

さらに政府が積極財政を進めれば、財政拡張のため国債増発懸念長期金利上昇という圧力が生まれます。

つまり、

「財政は拡張したい。でも長期金利は上げたくない。そして円安も止めたい」

という、なかなか難しい政策運営になります。


為替介入という「別のカード」

そこで登場するのが、為替介入です。

7月31日に行われた日米協調介入は、日本と米国が円買い介入を実施したものです。日本政府は8月3日に介入を認めました。

ここが重要なのは、日銀の利上げを待たずに円安をけん制できるという点です。

つまり、

「金利を大きく引き上げずに、円安だけは止めたい」

という場合には、為替介入は一つの手段になります。

ただし、為替介入には限界があります。

介入によって一時的に円高に動かせても、日米の金利差や日本のファンダメンタルズが変わらなければ、再び円売りが強まる可能性があります。

実際、今回の協調介入後も、追加介入への警戒が続いています。

だから投資家としては、「介入したから円高になる」と単純に考えるのではなく、「介入しても円安圧力が残るのか?」を見る必要があります。


さらに気になる「NISAで国債」

ここでもう一つ、気になる政策があります。

それが国債のNISA対象化です。

現在のNISAは、上場株式や投資信託などが対象で、国債は対象になっていません。

ところが2026年7月、国債をNISAの対象にする議論が浮上しています。

片山財務相は7月14日の会見で、国債のNISA対象化について、国債の安定消化や保有者の多様化という観点から質問を受け、「やっていくときじゃないか」との考えを示しています。

これは今回のテーマを考えるうえで、かなり重要です。

なぜなら、日本では「金利のある世界」が戻ってきたことで、家計のお金を預金だけでなく、国債などにも振り向ける必要性が意識され始めているからです。

もちろん、「NISAで国債を買えるようにする=政府が国債を買ってほしい」と単純に断定することはできません。

しかし、国債の保有者を多様化するという政策的な狙いは意識されています。


投資家が見るべきなのは「3つの数字」です

ここまでの話を投資家目線に置き換えると、今後注目したいのは3つです。

① ドル円

まずは当然、為替です。

今回の協調介入によって円安が止まるのでしょうか。

それとも、円高 → 再び円安という動きを繰り返すのでしょうか。

もし介入しても円安が再加速するなら、政府・米国による為替介入だけでは問題を解決できないという市場の判断につながる可能性があります。

その場合、日銀の追加利上げへの圧力が強まる可能性もあります。


② 日本の長期金利

為替ばかりに目を向けていると見落としやすいですが、日本10年国債利回りは今後の株式市場を考えるうえで重要な指標です。

長期金利が上昇すれば、

  • 国債価格にはマイナス
  • 銀行・保険にはプラス要因
  • 高PERのグロース株には逆風
  • 不動産には逆風

というように、資産ごとの明暗が分かれやすくなります。

特に重要なのは、

「政府が金利上昇を抑えようとしても、市場がそれを受け入れるのか」

という点です。

市場が政府の財政運営に不安を感じれば、国債が売られて金利が上昇する可能性があります。

政府が金利を抑えようとすることと、市場が実際に金利を抑えてくれることは別問題なのです。


③ 日銀の金融政策

そして最後が日銀です。

今後、円安+インフレが続けば、追加利上げへの圧力が高まります。

一方で、景気悪化+金利上昇となれば、日銀は難しい判断を迫られます。

さらに、もし国債買い入れの増額などによって長期金利を抑えようとすれば、市場から「財政ファイナンスではないか」と疑われるリスクもあります。

これは非常に重要なポイントです。

政府が国債を増発する。

日銀が国債を大量に買う。

「政府の財政赤字を日銀が支えているのでは?」という疑念が強まる。

日本の財政への信認が低下する。

円安と長期金利上昇が同時に進む可能性も出てきます。

つまり、金利を抑えようとした政策が、逆に金利上昇を招く可能性すらあるのです。


個人投資家はどうする?

今の段階では、特定の資産に一気に賭けるよりも、金利・為替の変化に耐えられるポートフォリオを意識することが重要だと思います。

例えば、

円安が続くケース

輸出企業や海外売上比率の高い企業には追い風です。

一方で輸入物価の上昇が続けば、国内消費関連企業には負担になる可能性があります。

円高+利上げのケース

銀行や保険など金融株には追い風になりやすくなります。

一方、円安メリットを受けていた輸出企業には逆風となる可能性があります。

長期金利上昇が続くケース

銀行・保険などにはプラス要因がある一方、高PER株や不動産などには注意が必要になります。

長期金利が抑制されるケース

債券価格には追い風となり、株式市場では金利上昇によるバリュエーション調整が起きにくくなります。

このように、「円安になるか、円高になるか」だけでなく、「金利がどうなるか」をセットで考えることが重要になります。


まとめ:政府の政策より「市場がどう反応するか」を見よう

今回の一連のニュースを見ていると、円安は止めたいでも、長期金利の上昇は抑えたい

さらに、積極財政も進めたいという、難しい政策運営が見えてきます。

もちろん、5月の日銀との会談については、国債買い入れを巡る政府と日銀の説明に違いがあるため、現時点で「高市政権が日銀に国債を買わせようとしている」と断定するべきではありません。

ただ、為替介入、長期金利への警戒、国債の安定消化、NISAへの国債組み入れ議論が相次いでいることは事実です。

だからこそ、個人投資家が注目すべきなのは「高市政権は何をしたいのか」だけではありません。

政府が円安と金利上昇を同時に抑えようとしたとき、市場がそれを受け入れるのか。

ここが最大のポイントだと思います。

今後は、

① ドル円

② 日本10年国債利回り

③ 日銀の追加利上げ・国債買い入れ方針

この3つをセットで追っていきたいと思います。

為替だけを見ていると、「円安だから介入」「円高だから介入終了」と短期的な値動きに振り回されやすくなります。

しかし、為替 × 金利 × 財政という3つの関係を見れば、日本株や債券市場がどちらに向かおうとしているのか、少し違った景色が見えてくるはずです。

「政府が何をしたいか」ではなく、「市場がそれをどう評価するか」。

今後とも注視していきたいと思います。

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