国民年金には、毎月支払う方法のほかに「6カ月前納」「1年前納」「2年前納」という支払い方法があります。
まとめて先に支払うことで、保険料が割引される仕組みです。
当然ですが、同じ国民年金を払うのであれば、安く払える前納の方がお得に見えます。
でも、ふと思いました。
「そのお金を先に払わず、銀行などに置いておいたらどうなる?」
昔なら、前納を選ぶのはほぼ間違いではなかったでしょう。
銀行の普通預金金利がほぼゼロだったからです。
しかし、現在は金利のある預金も増えてきました。
そこで今回は、国民年金の前納割引を単純な「○円お得」ではなく、年率に換算して考えてみます。
国民年金は前払いするといくら安くなる?
令和8年度の国民年金保険料は、月額17,920円です。
口座振替の場合、前納すると次のようになります。
| 支払い方法 | 支払額 | 割引額 |
|---|---|---|
| 毎月払い | 17,920円/月 | ― |
| 6カ月前納 | 106,300円 | 1,220円 |
| 1年前納 | 210,530円 | 4,510円 |
| 2年前納 | 417,150円 | 12,930円 |
※令和8年度。毎月払いとの比較。
2年前納になると、なんと12,930円も安くなります。
2年間の毎月払いなら、430,080円かかるところ、2年前納なら、417,150円です。
これはかなり大きいように感じます。
でも「割引額」だけを見てはいけない
ここで注意したいのが、前納は将来払うお金を先に払っているということです。
例えば2年前納なら、417,150円を最初に支払います。
一方、毎月払いなら17,920円ずつ払っていけばいいです。
つまり毎月払いを選べば、最初の時点では約40万円のお金が手元に残ります。
このお金を銀行に預けておけば、当然ながら利息がつきます。
そこで、「前納による割引」と「前納しなかったお金を運用して得られる利益」を比較してみます。
まずは単純な割引率を計算
2年前納の場合、毎月払いとの差額は12,930円です。
毎月払いの2年分は430,080円なので、
12,930円 ÷ 430,080円 ≒ 3.0%
となります。
つまり、単純な割引率だけを見ると、2年前納は約3%安いということになります。
1年前納なら、4,510円 ÷ 215,040円 ≒ 2.1%
6カ月前納なら、1,220円 ÷ 107,520円 ≒ 1.1%
です。
| 支払い方法 | 単純な割引率 |
|---|---|
| 6カ月前納 | 約1.1% |
| 1年前納 | 約2.1% |
| 2年前納 | 約3.0% |
では、銀行金利や運用利回りと比較してみる
「前納しなかったお金を運用する」という選択肢を考えてみます。
今回は比較のため、以下の金利・利回りを設定します。
- 普通預金:年0.55%
- 定期預金:年1.55%
※預金金利は税引前。
すると、こんな関係になります。
| 運用先 | 想定年率 | 6カ月前納 (約1.1%) と比較 | 1年前納 (約2.1%) と比較 | 2年前納 (約3.0%) と比較 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 0.55% | × | × | × |
| 定期預金 | 1.55% | 〇 | × | × |
いずれの前納期間でも普通預金の0.55%よりは有利であることがわかりました。
一方、6カ月前納にするくらいなら、定期預金1.55%を選択した方が有利といえます。
資産運用したらもっと増える?
では、オルカンに投資したらどうでしょうか。
仮に年5%のリターンが得られるとすると、5% > 2年前納の約3%となります。
単純に数字だけを比較すれば、
国民年金を前納するより、そのお金をオルカンに投資して運用したほうが期待リターンは高い
ということになります。
ただし、ここには非常に大きな注意点があります。
オルカンの5%は「確定利回り」ではありません。
株式市場なので、1年後に5%増えている保証はありません。
むしろ、タイミングによっては大きく値下がりすることもあります。
また、国民年金の前納の代わりにしようと思うと、オルカンを毎月取り崩す必要があり、複利の効果が減っていきます。
一方、国民年金の前納による割引は確定しています。
なので、この2つを単純に同じものとして比較することはできません。
前納にもデメリットがある
もちろん、前納すれば誰でも得というわけではありません。
一番大きいのは、まとまったお金が一気に出ていくことです。
2年前納なら約42万円です。
そのお金を前納に回したことで、急な出費に対応できなくなってしまったら本末転倒です。
また、今後の生活状況が変わる可能性もあります。
そのため、
「割引率が高いから、とにかく2年前納!」
と考えるのではなく、生活防衛資金を確保したうえで、余裕資金で前納することが大切です。
そしてもう一つ重要なのが「キャッシュレス還元」
実際には、国民年金の支払い方法を考えるとき、
前納割引だけではなく、クレジットカードなどのポイント還元も考慮する必要があります。
例えば、前納による割引に加えてポイント還元を受けられるのであれば、実質的なメリットはさらに大きくなります。
ただし、クレジットカード納付の前納額は口座振替より割引額が小さい場合があります。
令和8年度の場合、2年前納は、
- 口座振替:417,150円
- 現金・クレジットカード:418,510円
となっています。
そのため、ポイント還元を考える場合は、
「前納割引+ポイント還元」
まで含めて比較したほうがいいでしょう。
結論:国民年金の前納は、今でもかなりお得
今回、国民年金の前納を「割引率」だけでなく、資金を先に支払うことによる機会損失まで考えてみました。
令和8年度の口座振替では、2年前納によって12,930円安くなります。
単純な割引率では約3%のメリットがあります。
安全資産で運用するくらいなら、国民年金は前納したほうが有利と言えます。
一方、6カ月前納に比べると定期預金で高金利のものが見つかれば、そちらの方が有利になるケースも考えられます。
銀行金利がほぼゼロだった時代には、「前納して割引を受ける」という選択は非常に分かりやすいものでした。
金利が上がってきた今は、「前払いするお金を、そのまま運用したらどうなる?」と一度考えてみることにも意味があります。
とはいえ、現状の金利水準であれば、少なくとも国民年金の前納はまだまだ魅力的です。
但し、「先払いでお得」ではなく、「先払いによって得られる割引が、資金を先に出すコストを上回っているか」を見てみるのも面白いと思います。

