「オルカンを買っておけば、世界中の企業に分散投資できる」
NISAで投資を始めた人なら、一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。
私自身も、全世界株式への投資を考えるとき、「オルカン」は有力な選択肢の一つだと思っています。
ところで、そんなオルカンの中身は、ずっと同じなのでしょうか。
実は、そうではありません。
オルカンのベンチマークであるMSCI ACWIでは、定期的に構成銘柄が見直されています。
そして今回、MSCIが2026年8月の定期見直しを発表しました。
なんと、55銘柄が追加され、92銘柄が削除されます。
今回は、この「オルカンの中身の入れ替え」をきっかけに、
- オルカンはどんな仕組みなのか
- なぜ銘柄が入れ替わるのか
- 今回、どんな企業が入ってくるのか
- 日本株では何が変わるのか
- 個人投資家はこのニュースをどう見るべきなのか
を考えてみたいと思います。
オルカンは「世界の株を全部買う」わけではない
「全世界株式」と聞くと、
世界中の上場企業を全部買っている
ように感じるかもしれません。
しかし、実際には違います。
代表的な「オルカン」であるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)への連動を目指しています。
つまり、世界中の企業を無条件に全部買うのではなく、MSCIが定めたルールに基づいて選ばれた企業を組み入れるという仕組みです。
そして、その「選ばれる企業」が変われば、オルカンの中身も変わります。
実際、三菱UFJアセットマネジメントも、MSCI ACWIの組入銘柄が変更されれば、原則としてオルカンの組入銘柄も変更されると説明しています。
つまり、オルカンを買っている人は、自分で個別株を売買していなくても、世界の株式市場の変化に合わせて、保有する企業が少しずつ入れ替わっているわけです。
2026年8月、55銘柄追加・92銘柄削除
今回の変更は、MSCIが2026年8月に行う定期見直しによるものです。
MSCI ACWIでは、
追加:55銘柄
削除:92銘柄
という大規模な変更が行われます。
MSCIは定期的に指数の構成銘柄を見直しており、公式サイトでも四半期ごとの追加・削除を確認できるようになっています。
今回の変更も、8月のレビューで発表された内容が反映されることになります。
オルカンは「一度買ったら中身が固定される商品」ではない
ということです。
世界の企業の規模や株式市場での位置づけが変われば、それに合わせて指数も変わっていきます。
なぜ、そもそも銘柄を入れ替えるのか?
MSCIの指数は、世界の投資家が実際に投資できる市場をできるだけ適切に反映することを目的として設計されています。
そのため、
- 企業の時価総額
- 浮動株調整後の時価総額
- 流動性
- 外国人投資家がどの程度投資できるか
- 市場へのアクセス
など、複数の条件が関係してきます。
つまり、
会社が大きくなった
↓
必ずMSCIに採用される
という単純な仕組みではありません。
逆に言えば、企業そのものの価値と「世界の投資家から見た投資対象としての位置づけ」は、必ずしも同じではないということです。
ここは個別株投資をするうえでも、意外と重要な視点だと思います。
今回、どんな企業が入ってくるのか?
追加銘柄には、米国のSanDiskなど、半導体・ストレージ関連の企業が含まれています。
また、航空宇宙・防衛分野などで使用される特殊素材を手掛けるCarpenter TechnologyやATIなども追加されます。
新興国側でも、台湾の半導体関連企業などが加わります。
こうして見ると、「オルカン=米国の巨大IT企業を買う商品」というイメージだけでは、実際の中身を十分に表せないことが分かります。
AIや半導体だけでなく、
- ストレージ
- 半導体
- 航空宇宙
- 防衛
- 素材
など、世界の産業構造の変化を反映する形で企業が入れ替わっていきます。
もちろん、今回追加された企業が「今後必ず株価上昇する」という意味ではありません。
重要なのは、世界の株式市場そのものが変化していることです。
日本株では何が変わる?
今回、日本株でも変更があります。
KOKUSAI ELECTRICが追加される一方、JFEホールディングスと西武ホールディングスが除外されます。
この3社を並べてみると、少し興味深いことが見えてきます。
KOKUSAI ELECTRICは半導体製造装置メーカーです。
一方、JFEホールディングスは鉄鋼、西武ホールディングスは鉄道を中心にホテル・不動産なども手掛ける企業です。
もちろん、
半導体=買い
鉄鋼・鉄道=売り
という単純な話ではありません。
今回のMSCIの採用・除外だけで、それぞれの企業の将来性を判断することもできません。
しかし、「世界の投資家から見た日本株」という視点では、興味深い変化です。
日本の個人投資家は、どうしても
「日本で有名な会社か」
「業績が伸びているか」
「配当が高いか」
という国内目線で企業を見がちです。
しかし、MSCIのようなグローバル指数では、日本企業も米国企業や台湾企業、インド企業などと同じ土俵に乗ります。
そこで問われるのは、
「世界の投資家から見て、この会社は投資対象としてどんな位置にいるのか?」
という視点です。
今回の3社の変更は、そんな見方をするきっかけになります。
日本企業の業績が伸びても、世界での存在感が高まるとは限らない
例えば、日本企業A社の利益が10%増えたとします。
普通なら、
「業績が伸びたのだから、世界の中での存在感も高まるだろう」
と考えるかもしれません。
しかし、MSCI ACWIは世界の企業を対象にしています。
仮に、
日本企業A社 +10%
米国企業B社 +30%
インド企業C社 +50%
となれば、日本企業A社の業績が伸びていても、世界の中での相対的な存在感は低下する可能性があります。
つまり、日本株を見るときにも、「日本の中でどうか」だけではなく、「世界の中でどうか」という比較が必要になります。
これは、オルカンを保有していなくても、個別株投資家にとって参考になる考え方です。
さらに、日本株には「円」という問題もある
為替も忘れてはいけません。
MSCI ACWIは米ドルベースの指数です。
そのため、日本企業の株価が円ベースで変わらなくても、円相場が動けば、ドル換算した時価総額は変化します。
例えば円安になれば、
日本企業の円ベースの時価総額
↓
ドルに換算
↓
世界の企業と比較したときの規模が相対的に小さくなる
ということが起こります。
そのため、世界株指数の中で日本株の存在感を見るときには、企業業績+株価+為替+時価総額をセットで考える必要があります。
「MSCIに採用された=買い」ではない
MSCIに新しく採用された企業を見ると、
「指数採用だから買いなのでは?」
と考えたくなります。
確かに、MSCIをベンチマークとして運用するファンドなどが指数変更に合わせて売買するため、採用銘柄には買い需要、除外銘柄には売り需要が発生する可能性があります。
しかし、「需給」と「企業価値」は別物ということにも注意が必要です。
MSCIに採用されたからといって、
- 売上高が増える
- 利益が増える
- キャッシュフローが改善する
- 配当が増える
わけではありません。
逆に、MSCIから除外されたからといって、企業の利益や事業が突然消えるわけでもありません。
つまり、
MSCI採用・除外は株価を動かす「需給要因」にはなり得るが、それだけで企業価値を判断する材料にはならない
ということです。
個別株投資をするなら、
- なぜ採用・除外されたのか
- 業績はどうなっているのか
- 株価は割高なのか、割安なのか
- 今後の成長性はどうなのか
- 採用・除外による需給変化はどの程度なのか
を分けて考えたいところです。
では、オルカンを持つメリットは何なのか?
個別株投資なら、自分で企業を選び、
「この会社は伸びそう」
「この会社はもう厳しい」
「この株を売って、あの株を買おう」
と判断する必要があります。
しかし、オルカンではそうした銘柄選びを自分で行う必要がありません。
MSCI ACWIという指数そのものが、世界の株式市場の変化に合わせて定期的に見直されます。
そして、その指数への連動を目指すオルカンも、原則としてその変更を反映します。
これを自分で売買しなくてもいい。
ここに、インデックス投資の大きな魅力があります。
「ほったらかし投資」は、本当に何もしないことではない
ただし、
「オルカンを買ったら、あとは完全に何も考えなくていい」
という意味ではありません。
オルカンも株式です。
当然、
- 株価下落リスク
- 為替リスク
- 世界経済の悪化
- 米国株への高い比重
- 地政学リスク
などがあります。
「世界に分散している」ことと、
「価格が下がらない」ことは全く別の話です。
また、オルカンが世界のどこにどれくらい投資しているのかも、定期的に確認しておきたいところです。
三菱UFJアセットマネジメントでは、オルカンの組入国・地域や銘柄について、最新の月報などで確認できると案内しています。
だから私は、
「ほったらかす」のは銘柄選びであって、投資そのものではない
と考えています。
オルカンの銘柄入れ替えから、個別株投資家が学べること
今回のニュースは、オルカンを保有している人だけの話ではありません。
個別株投資をする人にとっても、面白い視点を与えてくれます。
例えば、日本株を選ぶときに、
「この会社は日本では有名だから」
だけで判断するのではなく、
「世界の投資家から見たら、この会社はどんな企業なのか?」
と考えてみましょう。
そのときに見るのは、
- 時価総額
- 浮動株
- 流動性
- 海外売上高
- 世界シェア
- 業績
- EPS
- 配当
- PER・PBR
- 今後の成長性
などです。
特に日本企業の場合、「国内では大企業だけど、世界ではどうなのか?」という視点を持つと、企業の見え方が変わることがあります。
今回のMSCI見直しで私が注目したいこと
今回、55銘柄が追加され、92銘柄が削除されます。
その中には、日本株のKOKUSAI ELECTRIC、JFEホールディングス、西武ホールディングスのような企業も含まれています。
ただ、私は今回のニュースを、
「KOKUSAI ELECTRICが採用されたから買おう」
「JFEや西武HDが除外されたから売ろう」
という話としては見ません。
むしろ、
世界の株式市場では、企業の入れ替わりが常に起きている
ということを再確認するニュースだと思っています。
今の世界経済を支えている企業が、10年後も同じとは限りません。
逆に、今はそれほど注目されていない企業が、10年後には世界を代表する企業になっているかもしれません。
個別株投資なら、それを自分で見つけなければなりません。
しかしオルカンなら、世界の変化に合わせて指数そのものが変わり、その変化をファンドが追いかけていってくれます。
だからこそ、
「世界経済そのものに投資する」
という考え方ができるわけです。
まとめ
今回のMSCIの定期見直しでは、MSCI ACWIで55銘柄が追加され、92銘柄が削除されます。
そして日本株でも、
- KOKUSAI ELECTRIC:追加
- JFEホールディングス:削除
- 西武ホールディングス:削除
という変更があります。
ただし、
MSCIに採用された=買い
MSCIから除外された=売り
と単純に考えるべきではありません。
指数の変更によって需給が変化する可能性はありますが、それと企業そのものの価値は別だからです。
今回のニュースから私が改めて感じたのは、
オルカンは「世界中の株を買って放置する商品」ではなく、「世界の変化に合わせて中身が変わり続ける商品」だということです。
世界の主役が変われば、指数の構成も変わる。
企業の時価総額が変われば、組入比率も変わる。
そして、投資家自身がその都度売買しなくても、その変化をファンドが追いかけてくれます。
これが、オルカンに代表されるインデックス投資の「ほったらかし」の正体なのではないでしょうか。
一方で、個別株投資をするなら、
「この会社は日本で強いか?」だけでなく、「世界の投資家から見て、この会社はどうなのか?」
という視点も持っておきたいところです。
オルカンを単に「NISAで毎月積み立てる商品」として見るのではなく、世界の企業を映し出す一つの窓として見てみる。
そうすると、今回の55銘柄追加・92銘柄削除というニュースも、少し違った見方ができるのではないでしょうか。
※本記事は特定の金融商品や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。指数の採用・除外による需給変化と、企業そのものの価値は分けて考える必要があります。

